※このシリーズの各話感想はこちらをご覧ください。
Donna Troy (ドナ・トロイ)といえば、「オリジンが曖昧」です。登場し始めた最初の頃は「Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)が火事になったアパートから女の子の赤ちゃんを助け出したが名前も両親も分からず、アマゾン族の女王ヒッポリタに預けて育ててもらうことにした。その女の子、ドナ・トロイが成長し、ヒーローWonder Girl (ワンダーガール)として活動するようになった」というものでした。
ファンサイトの情報によると、Crisis on Infinite Earths (感想はこちら)の結果起きたダイアナの設定変更に対応する形でドナ・トロイの設定も変更することになったらしいです。第二の設定が語られているのがこちらの一連のエピソードになります。
Written by: George Perez, Marv Wolfman
Pencils: George Perez
Inks: Bob McLeod, George Perez
Colored by: Adrienne Roy
Cover by: George Perez
発行年 1988年
Amazonのページはこちら (#51)。購入及び数ページ分の試し読みができます。
今秋Comixologyのサイトが閉鎖するということでAmazonや公式サイトへのリンクに貼り変えていますが、#50に関しては現時点のAmazonでは販売されていないようです。)
いつものように若手ヒーローチームTitansメンバーと行動しているドナ。しかし、そんな彼女を追ってある怪物が現れる。同時に、謎の人物も。Titansメンバーは怪物と謎の人物の関係を疑うが、彼女はドナに話があるという。ドナは彼女とコミュニケーションを聞き、今まで自分が思っていた「過去の記憶」がすべて偽物だったことに気づかされる。そして幼いドナを育てたティターン族の神々たちに危機が訪れていることを知り、Titansのメンバーと共に助けに向かうのだった――というのがあらすじです。
この作品で語られているドナの設定は、
・赤ちゃんの頃のドナは火事になったアパートの中で死にかけていた。
・かつてティターン族の神々(古代ギリシアの神々)が、自分たちの後継者にするため瀕死のドナを救出し、自分たちの星へと連れて帰った。
・様々な星から集められた同じような境遇の子供たちと共に、ドナはのびのびと育てられた。
・あるとき、ティターン族は子供たちに「故郷に戻り、人間がどのようなものかよく学んでくるように」と彼らをそれぞれの故郷に帰した。混乱を避けるため、彼らには偽の記憶を与えた。ドナの場合、「火事になったアパートからワンダーウーマンに救出された」というものだった。
・ドナは偽の記憶を本当だと信じながら、ヒーローとして活動していた。
というものです。最初のドナの設定は、「偽の記憶だった」ということになってしまいました。
これを読んで思い出したのは、2016年からのRebirth期Titans誌で語られた「ドナはダイアナを倒すために産み出されたが、ダイアナに偽の記憶を与えられヒーローとして生きるようになった」という設定です(詳しくはこちら)。
ドナが安定した生活を送れるように偽の記憶を与えられるのは、もしかして定番の展開なのでしょうか。とはいえ、ダイアナが、元々は敵だったドナの記憶を操作するのは危うい展開のような気がするのですが……。
さて、物語はドナと同様にティターン族に育てられた一人の気が狂い、ティターン族とその子供たちを狙うという流れになります。当然立ち向かわなければならないドナですが、Titansのメンバーもドナに協力します。一人一人にちゃんと見せ場が与えられている展開が非常にうまいです。また、ティターン族に育てられた子供たちの中にはドナに協力する人もいるのですが、それぞれに細かく個性が与えられていていいな、と思いました。
何人もの人たちが入り乱れるお話なのですが、どの人もそれぞれに一生懸命に事態の解決を図ろうとしていて、爽やかな読後感のエピソードでした。