2021年2月17日水曜日

Future State (2021-) #1-#2: Kara Zor-El, Superwoman 感想

※このシリーズの各話感想はこちらをご覧ください。


 2021年1月~2月、DCコミックス社は"Future State"というタイトルのコミックを多数出版しました。Future Stateという名前の通り、DCコミックス社のヒーローたち起き得る未来を描いています。どうも3月から始まるInfinite Frontierという時期のヒーローたちが、悪くするとFuture Stateのような未来にたどり着いてしまうというコンセプトらしいです。

 

 Infinite Frontierと呼ばれる時期になったときにどういう物語が描かれるのか現状では分からないので、Future Stateで描かれている世界が良いものなのか悪いものなのかも良く分からないのですが、とにかくお祭りみたいなものだということで、Future Stateの中でも気になったシリーズをピックアップして読んでみました。

 

 今回の感想を書くのは、Supergirl (スーパーガール、カーラ・ゾー・エル)が成長しSuperwoman (スーパーウーマン)となった時期を描いたFuture State (2021-) : Kara Zor-El, Superwomanです。

 

【基本情報】
Written by: Marguerite Bennett
Art by: Marguerite Sauvage
発行年 2021年

公式サイトはこちら。



 現在からしばらく経った未来。かつてのSupergirl (スーパーガール、カーラ・ゾー・エル)は地球を離れ、月に難民たちのための保護区を作っていた。かつて、彼女が助けていたSuperboyも今は立派に成長し、彼女の助けを必要としなくなっている。カーラは愛犬のKryptoの思い出を胸に月を守っているのだったが、そこにLynariという異星人が助けを求めてやってくる。自分の力をコントロールしきれないでいるLynariに、カーラは力の使い方を教えるのだったが、そこにLynariを追う敵がやってくるのだった――というのがあらすじです。


 第一印象として、とてもDC Comics: Bombshells (感想はこちら)に似ています。それもそのはず、ライターもアーティストもDC Comics: Bombshellsのクリエイターです。テーマも「自分をありのままに受け入れる」ということでBombshellsと共通です。

 

 ただ、この作品、ライターが描こうとしているものに対して2話と言うのが短すぎたという印象でした。結果として、テーマをストレートにモノローグで語ることになっています。Bombshellsもモノローグでテーマを語ることの多い作品だった記憶がありますが、あちらは一代長編で様々なキャラクターが手を変え品を変え、同じテーマを語っていたわけです。一方こちらは、ストーリーが短すぎるために「テーマのモノローグに絵をつけました」という感が拭えません。コミック作品としては、あまり良くないと思います。

 

 Future Stateの他のシリーズを読めば分かるのかもしれませんが、カーラによって助けられたはずの難民の人たちがあまりカーラに好意を持っていないらしい描写の意味も良く分かりません。カーラが強すぎるから、ということのようですが、作中でこの要素を入れる意味があったのかどうか……。

 異星人のLynariの設定を語るのに尺を使ってしまうのではなく、カーラが月に難民の保護区を作ろうと思った経緯や難民として保護された人とのあれこれを描いた方が、結局すんなりテーマを表現できたのでは、と思えた一作でした。

 

 ライターのMarguerite Bennett氏の作品は大好きですが、Bombshells感の薄い作品も読みたいなと思います。