※Wonder Woman (2006-2011)の各シリーズの感想はこちらをご覧ください。
2006年から始まったWonder Woman誌の最初のエピソードは、"Who is Wonder Woman?"というサブタイトルがついています。
サブタイトル通り、「ワンダーウーマンとは何者か?」を改めて書きなおした作品です。というのも、この作品の前に描かれた展開でWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)は世界を助けるために人を殺し(Superman: Sacrifice (感想はこちら)収録)、その後に起きたInfinite Crisis(感想はこちら)事件を契機に自分を見つめなおすためワンダーウーマンとしての活動を停止し旅に出た――ということが描かれています。
というわけでこの作品は、ダイアナが再びワンダーウーマンとして活動を始めるまでを描いた物語です。同時にダイアナとドナ・トロイ、キャシー・サンズマークなど、仲間たちとの絆が確認できる物語でもあります。
読む順番としては#1~#4のあとに、Annual #1です。#5ではないので気をつけましょう。
Written by: Allan Heinberg
Pencils: Terry Dodson, Gary Frank
Inks: Rachel Dodson, Jonathan Sibal
Letterer: Rob Leigh, DC Lettering
Colorist: Dave McCaig
Cover Color by: Dave Stewart
発行年 2006年
公式サイトはこちら。
ダイアナが姿を消した世界では、Donna Troy(ドナ・トロイ)が二代目ワンダーウーマンとして頑張っていた。Wonder Girl (ワンダーガール、キャシー・サンズマーク)もドナと共に戦っていた。しかし、このワンダーウーマンがダイアナではないことはダイアナの宿敵たちには明らかであり、彼女たちはスティーブ・トレバーを誘拐しダイアナが姿を現すよう要求する。ダイアナの代わりに救出に向かったドナ・トロイはスティーブの救出には成功したが、今度はドナが捕らえられることになる。そしてドナを助けるため、とうとうダイアナが向かうのだった――というのがあらすじです。
ダイアナは単純にワンダーウーマンに復帰するだけではなく、政府組織のエージェント、ダイアナ・プリンスとしても活動することになりますのでその辺りの説明も入ってきます。またこの頃、Infinite Crisisあたりの事件の影響でアマゾン族の故郷、セミッシラ島も姿を消し古代ギリシアの神々も地球から離れています。ということでダイアナは「アマゾン族の使命として」でもなく、「神々の使いとして」でもなく、「自分で選んで」ワンダーウーマンとして戦う――ということになります。
ダイアナのファン――ではなく宿敵のみなさん(しかしドナのワンダーウーマンがダイアナではないと見抜いている辺り、ファンと言っていいのでは)と戦いながら自分の立ち位置を明確にしていくダイアナの姿が印象的です。
そしてまた、この作品はダイアナとドナ、キャシーの絆を再確認できるお話でもあります。
Infinite Crisis事件の後、何も言わずに姿を消したダイアナに対してめちゃくちゃに怒っているキャシーと、割と受け入れているドナ。これはキャシーの方が事件で失ったものが多かった(恋人も父親も失ってしまった)ということもありますし、二人の性格の違いもあるのかなあ、という気もしました。お姉ちゃん的ポジションのドナがダイアナのことを穏やかに待っている分、キャシーがダイアナに遠慮なく怒りをぶつけられているという気もします。
とはいえ、そんなキャシーも今回の黒幕との最終決戦ではしっかりダイアナに協力するわけです。ダイアナとドナ、キャシーが三人でいるシーンはお互いが家族のように思い合っていることが感じられました。
ダイアナを信じて、ダイアナに寄り添っていてほしかったからこそ黙っていなくなったダイアナにキャシーは怒っていたわけですし。また、キャシーとドナだけではなくダイアナが広くヒーローたちに信頼を得ている姿も見どころです。
なお、この作品の中でドナ・トロイのオリジン(ヒーローになったきっかけや生い立ち等の設定)がこれまでの設定をまとめるような形でマイナーチェンジしています。
ここでのドナの設定は、「かつてダイアナの鏡像が生命を与えられ、ダイアナの友達となった。しかしダイアナと勘違いされ、Dark Angelに誘拐され仮死状態に陥る。後にダイアナに救出され、セミッシラ島でアマゾン族とTitans of Myth(ティーターン族、古代ギリシアの神々の中でも古い神々)に育てられる。やがてダイアナを追って人間界に向かい、ヒーローとして活躍するようになる」
というものです。変更に変更を重ねたドナの設定をよくぞここまでコンパクトな形で……と思いました。2011年にはまた設定が変わっちゃうんですけどね。