2020年1月29日水曜日

Wonder Woman (2016-) Vol. 9: The Enemy of Both Sides 感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


 Artemis(アルテミス)が登場するということで、Rebirth期Wonder Woman誌のVol. 9を読みました。本作はワンダーウーマン75周年記念号でもあるらしく、通常の連載作品のほかに多数のライターによる短編も掲載されています。筆者は短編の中ではGreg Rucka氏による「Lois Lane(ロイス・レーン)によるワンダーウーマンのインタビュー記事」という体裁の、実際は友達同士の雑談を許可を得て掲載したかのような作品や、Hope Larson氏による「ワンダーウーマンが有名家具店のIDEAにお買い物に行ったところ、組み立てができなかったという理由でIDEAを襲撃してきた敵に出会う」という作品が好きです。
 
 アルテミスが登場するエピソードは通常の連載作品の方でした。
 
【基本情報】
Writers: Rafael Albuquerque, Marguerite Bennett, Renae DeLiz, Brenden Fletcher, Karl Kerschl, Hope Larson, Fabio Moon, Steve Orlando, Rafael Scavone, Mairghread Scott, Tim Seeley, Liam Sharp, Gail Simone, Jill Thompson
Artists: ACO, Rafael Albuquerque, Raul Allen, Ramón F. Bachs, Laura Braga, Renae DeLiz, Colleen Doran, Sebastian Fiumara, Jenny Frison, Phil Jimenez, Karl Kerschl, Rick Leonardi, Fabio Moon, Yanick Paquette, Hugo Petrus, Claire Roe, Riley Rossmo, Marguerite Sauvage, Liam Sharp, Marcio Takara, Jill Thompson, Felipe Watanabe, Annie Wu

発行年 2019年

公式サイトはこちら。


 アルテミスが登場するストーリーは、Red Hood and the Outlaws (感想はこちら)で描かれたエピソードを完全に踏襲していたものだったので、できればそちらの作品を読んでからこの巻を読んだ方が面白いかもしれません。この巻を読むために必要な知識としては、
 
 ・アルテミスはBana-Mighdallと呼ばれる、セミッシラ島の外に住むアマゾン族の出身。
 ・Bana-Mighdallのアマゾン族はかつてセミッシラ島に住んでいたが、王族の一人Antiope (アンティオペ)と共にセミッシラ島を出て新天地を求めた。放浪を続けていたが、現在は砂漠の中のQuracと呼ばれる国の中に住んでいる。
 ・セミッシラ島のアマゾン族は古代ギリシアの神々を信奉しているが、Bana-Mighdallのアマゾン族は古代エジプトの神々を信奉している。一族を守る戦士Shim'Tarに選ばれたものには、神器Bow of Ra(ラーの弓)が与えられる。
 ・ラーの弓は大変危険なものであり、かつてそれを手にしたアルテミスの幼馴染Akilaは弓に意識を乗っ取られ暴走してしまった。
 ・ラーの弓は現在のShim'Tarであるアルテミスのもとにあるが、彼女はBana-Mighdallに留まることなく放浪を続けている。
 
 というものになります。結構多いですね。

 さてこの作品ではBBana-Mighdallのアマゾン族の始祖であるアンティオペの姉妹、Atalantaが登場します。彼女はアンティオペと共にBana-Mighdallに行き、一族の英雄となったもののその後行方不明になっていたようです。Atalantaを助け、彼女をBana-Mighdallのアマゾン族のもとに届け、そして……というのが物語のあらすじになっています。

 このAtalanta、Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)が子供のころには彼女の指導もしていたそうですから、アマゾン族の一部がBana-Mighdallに行ったのもそんなに昔のことではないということになりますね。

 ちなみにダイアナはAtalantaのことを"aunt"と呼んだり"great-aunt"と呼んだりで、この作中では関係性がちょっとはっきりしません。果たしてアンティオペとAtalanta姉妹はダイアナのおばさんなのか大おばさんなのか。
 大おばさんのことをおばさんと呼ぶことはあっても、おばさんのことを大おばさんとは呼ばないだろうから大おばさんが正しいのかな? なんて思っています。
 
 さて、以下はネタバレを含む感想です。ラストまでネタバレしています。


 
 物語の見どころとしては、アルテミスがダイアナと並び立つ存在として描かれていることがあげられます。
 
 元々アルテミスが最初に登場したMike Deodato氏がライターを務めたエピソード(感想はこちら)では、彼女はダイアナと同等の力を持つキャラクターとして描かれていました。
 しかし2016年からのRebirth期での彼女は、ダイアナより若く未熟な印象がありました。これは読者がそう感じるというだけではなく、アルテミス自身もそう思っているものとして描かれていたと思います。
 
 そんな中、この作品の中での経緯を経てダイアナがアルテミスに
 

"BUT OF EVERY AMAZON WHO LIVES... YOU ARE ONE OF MY CLOSEST SISTERS."

 「でも、生きているアマゾン族の中で……あなたは私に最も近い姉妹の一人」
 と言うのにはぐっとくるものがありました。
 2011年の大規模設定リセットの前にはダイアナの片腕として活躍することもあったアルテミスですが、2011年の設定リセット後は登場しなくなり、2016年の再リセット後は登場するようになったもののダイアナとの関係はあまり深くないものでした。
 やっとアルテミスがワンダーウーマンの世界に帰ってきたような気がして、とても嬉しい作品でした。