【基本情報】
Writer: Will Pfeifer
Artists: Brad Anderson, Pete Woods
Cover by: Brad Anderson
発行年 2007年
公式サイトはこちら (#1)。
アメリカにいるはずのDiana (ダイアナ、ワンダーウーマン)が囚われの身になったという情報を得て、アマゾン族の女王Hippolyta (ヒッポリタ)は魔女Circe (キルケ)に唆されアメリカへとアマゾンの軍を進める。しかし女王の真の目的はダイアナを取り返すことにとどまらなかった。
ダイアナをはじめ、Donna Troy (ドナ・トロイ)、Cassie Sandsmark (キャシー・サンズマーク、ワンダーガール)といったアマゾン族出身のヒーローたち、さらにはバットマンやスーパーマンなども戦争を終わらせる道を模索する。一方、ヒッポリタの忠実な部下であるArtemis (アルテミス)やPhilippus (フィリップス)は女王の行動に疑問を持ち始めるのだったが――
というのがあらすじです。
何と言っても、「専制君主制には君主が間違った道に進んだときに押しとどめる制度が必要」ということを思わせる話でした。王の決断で軍隊が動かせて、その後戦争を止めることができなくなるのは怖いですね。
物語としてはキルケが暗躍していることは早々に明かされるので、「早くキルケをなんとかして……」という気持ちで読み続けることになります。当時のWonder Woman誌に収録されているエピソードともつながっているようで、若干話が飛んでいるように感じられる部分もありますが楽しく読めました。
筆者はワンダーガールとスーパーガールの二人が協力して事態を打開しようとするエピソードが好きでした。結局思っていたようにうまくはいかないのですが。誰も彼もが頑張るけれども中々うまくはいかず、失敗が積み重なっていくお話でもあります。
最後、誰が戦争に終止符を打つことができるのか。ダイアナなのか、それとも――というところが見どころの作品だと思います。
以下、ネタバレを含む感想です。ラストまで完全にネタバレしています。
以前読んだGail Simone氏のWonder Woman誌(感想はこちら)がどうしてあんな設定になっていたのか、理解できるお話でした。なるほどこれだけアメリカで大暴れしていれば、この後「アマゾン」というだけで人間たちが警戒するのも当然だ――と思います。
Gail Simone誌のWonder Woman誌は、とにかくアマゾン族たちへの人間からの信頼を取り戻すこと、というのが大きな目的として描かれた話かなとも思いました。
それにしても。
この話はオチが二段構えで用意されています。
最初のオチでは、「これはアテナなどギリシアの神々によるアマゾン族への試練であり、戦争を止めることのできなかったアマゾン族は失敗したので相応の罰を受けなければならない」と語られます。
一方二番目のオチでは「……というのは嘘で、ギリシアの神々を拘束してアテナ神の地位を奪ったGranny Goodness (ダークサイドの部下)による陰謀だった」と語られます。
最初のオチを読んだとき、神話にありがちな神々の理不尽な試練(気まぐれともいう)でとても良いと思ったので、実はGranny Goodnessが暗躍していたのでした、というオチはちょっと残念でした。
理不尽で怖いギリシアの神々という方がいいと思うのですよ。