2022年11月13日日曜日

Dark Nights: Death Metal: Deluxe Eition 感想 -終焉はごく静かに-

  2016年から始まったRebirth期は、2011年から始まったNew52期に生まれた様々な独自設定を残しつつもNew52期以前の設定・登場キャラクターを復活させてDCコミックスの世界を大変面白くしてくれたと思います。

 そんなRebirth期も2021年には終わり、現在はInfinite Frontier期という時期に入っています。

 Rebirth期のラストを飾り、Infinite Frontier期にバトンをつないだ一大イベントがこのDark Nights: Death Metalです。

 筆者がこれまで読んできた作品でも、

 ・Justice League (2018-): 感想はこちら 

 ・DC's Year of the Villain: 感想はこちら 

  などのシリーズはこのDeath Metalへの道筋をつけるための作品でした。また、

 ・The Last Stories of the DC Universe: 感想はこちら 

  をはじめとするDeath Metal関連コミックもたくさん出版されました。

 このようにDCコミックス社の気合が非常に感じられる一作になっていますが、作品の質もその熱意を裏切りません。大変面白い作品でした。

 

【基本情報】
Writer: Scott Snyder
Penciller: Greg Capullo
Inker: Jonathan Glapion
Colorist: FCO Plascencia
Letterer: Tom Napolitano
Epilogue Artists: Yanick Paquette, Bryan Hitch
Epilogue Colorists: Nathan Fairbairn, Alex Sinclair
Collection Cover Artists: Greg Capullo, Jonathan Glapion, FCO Plascencia
発行年: 2021年


 公式サイトはこちら。

DARK NIGHTS: DEATH METAL: DELUXE EDITION

Get ready for the reality-shattering encore-now in a new deluxe edition hardcover! Writer Scott Snyder and artist Greg Capullo, the legendary team behind Dark Nights: Metal and Batman: Last Knight on Earth, reunite for one last tour of DC's Dark Multiverse.

 

 

 公式トレーラーなんていうのもあります。

 

 この記事はネタバレを気にせず書きますので、未読の方はご注意を。

 

 さてそもそも、Justice League (2018-)などのシリーズからの流れで創成神Perpetuaがすべての世界を滅ぼそうとしていました。そしてDark Multiverseという世界からやって来たBatman Who LaughsはPerpetuaに仕えていたのでした。

 

 このDeath Metalは、世界がほぼBatman Who Laughsに制圧されているところから始まります。Batman Who Laughsに従うと見せかけて、反旗を翻し始めるWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)。やがてBatman (バットマン、ブルース・ウェイン)、Superman (スーパーマン、クラーク・ケント)らと合流します。さらには他の世界のヒーローたちも。 

 Batman Who Laughsは様々な闇のエネルギーを吸収し、パワーアップして創成神Perpetuaを倒し、自分の望む世界を作ることを究極の目的としています。ということで中盤でPerpetuaはBatman Who Laughsに倒されるので、ヒーローたちはBatman Who Laughsを倒して希望を取り戻せばいいわけなのですが……、

 敵が1人になったからと言って戦いが楽になった感じがしないのが絶望的ですね。むしろ対Perpetuaの方がまだ何とかなりそう、と思わせるのが辛いところです。

 

 作品全体としては、非常に静かな印象を受けました。これはこの作品の前編にあたるDark Nights: Metal (感想はこちら)でも感じた印象と似ています。

 壮大な戦争のシーンの多くがナレーションと共に描かれているので、静かな語りを聞いている気持ちになるからでしょうね。読んでいて、「世界の終末は意外と淡々としているのかもしれない」と思いました。

 そして、この作品の中で最も印象的な女性ヒーローは何と言ってもダイアナです。この作品の鍵であり、文句なしに主役だと思います。

 彼女は神に匹敵する力を持って戦い、Batman Who Laughsを倒します。その踏ん張りのおかげでこの世界は消滅しないですみました。そしてNew52期以前のあらゆる歴史が1つになり、Infinite Frontier期へと繋がっていくことになります。

 

 思えば、遠い未来でのダイアナの姿を描いたFuture State: Immortal Wonder Woman (感想はこちら)は、ダイアナが世界の死を看取る物語でした。

 それになぞらえて言うならば、この作品は世界の延命措置を行うダイアナの物語とも言えます。

 つまり、Rebirth期最終盤に至ってダイアナは世界の有無そのものを左右し得る存在になったということなのだなと思いました。

 

 この作品で世界を救った代償にダイアナはしばらく別の世界に行くことになります。結果として地球の人間たちからは「ダイアナは死んだ?」と思われている状態でInfinite Frontier期はスタートすることになります。


 ダイアナというキャラクターをこんなにも神に近い存在にしたのがRebrith期だったわけですから、Infinite Frontier期では思い切って彼女の人間臭い面をいっぱい描いてみては、なんて筆者は思います。

 では実際にライター達はどんなダイアナを描くことにしたのか。すでに買ってあるInfinite Frontier期Wonder Woman誌の第一巻を読むのが楽しみです。