2021年6月23日水曜日

Dark Nights: Death Metal: The Last Stories of the DC Universe (2020-) #1 感想

※このシリーズの各話感想はこちらをご覧ください。

  Dark Nights: Death Metalは、DCコミックス社のヒーローたちが死力を尽くして戦った大型イベントです。そのイベントに関連して、最終決戦の前の一夜を描いたのがこちらの作品になります。Donna Troy (ドナ・トロイ)がとても格好いいらしいという噂を聞いていたので読んでみました。

 ……Death Metal本編を読む前に番外編的な作品を読むのはどうなのか……とは思わなくもないですが、セールの対象になる順番の違いなので仕方がないのです。

 

【基本情報】
Writer: Cecil Castellucci, Jeff Lemire, Christopher Sebela, Gail Simone, Scott Snyder, Mariko Tamaki, James Tynion IV, Mark Waid, Joshua Williamson
Pencils: Rafael Albuquerque, Mirka Andolfo, Meghan Hetrick, Francis Manapul, Christopher Mooneyham, Travis Moore, Daniel Sampere
Inks: Rafael Albuquerque, Mirka Andolfo, Meghan Hetrick, Francis Manapul, Christopher Mooneyham, Travis Moore, Daniel Sampere
Colored by: Enrica Eren Angiolini, Tamra Bonvillain, Andrew Dalhouse, Marissa Louise, Adriano Lucas, Francis Manapul, Ivan Plascencia
Cover by: Dee Cunniffe, Tula Lotay
発行年 2020年

公式サイトはこちら。



 Batman Who LaughsによりほとんどすべてのMultiverseの世界が滅ぼされ、生き残ったヒーローたちがおそらく負けるであろう最終決戦を前にかつてセミッシラだった場所に集まり最後の一夜を過ごす――というお話です。ドナ・トロイをはじめとした若手ヒーローたちが中心に据えられていますが、それとは別に 

  •  Dinah Lance (ダイナ・ランス)とOliver Queen (オリバー・クィーン)
  •  Barbara Gordon (バーバラ・ゴードン)とDick Grayson (ディック・グレイソン)

 など、特定のキャラクターにもスポットライトが当てられます。特にダイナとオリバーの話は、二人がもしかしたら歩いていたかもしれない人生を感じさせて感慨深いものでした。

 

 恋人や家族同士だと、やはり「これまで伝えきれていなかった思いを伝える」という展開になるのでしょうか。仮に明日世界が滅ぶことが分かったとして、大パニックになるでしょうがそれが落ち着いたら世界中でいろいろな人たちが「ありがとう」と自分の周りの人たちに告げることになるのかな、なんて思いました。

 

 さて、ドナ・トロイですが。噂に違わず格好いい! です。

 Rebirth期Titans誌のVol. 6 (感想はこちら)ではリーダーを務めた彼女ですが、あの時絶望から立ち上がったときの姿そのままに、今回も様々な世界のヒーローたちを鼓舞します。New52期~Rebirth期といろいろありましたが、もはや若手ヒーローというよりも完全に一人のヒーローになったという印象を受けました。

 

 また、ちらっとですがWonder Girl (ワンダーガール、キャシー・サンズマーク)と仲の良さそうな場面があったのもよかったです(下図)。

 


 

 

 2011年に始まったNew52期以前はワンダーガールの先輩後輩として関係の深かった二人ですが、New52期の設定リセットに伴いほとんど絡みがなくなってしまっていたのでここでこういう場面があったのは嬉しくなりました。 

 ……と、ドナの格好良さについては文句のない一冊なのですが、彼女の設定変更に驚かされた一冊でもありました。ここからは作品の感想というよりも、ドナの設定にこだわりたい人向けです。 

 

 作品が始まってすぐのドナのセリフに

"WHEN I WAS WONDER GIRL, I USED TO COME HERE AND WISH FOR SOMETHING TO WASH UP THAT WOULD CHANGE MY LIFE."

「私がワンダーガールだったころ、ここに来ては人生を変えてくれるような何かが打ち上げられるのを待っていた」

 というものがあります。これを読んだ時、「え、あなたワンダーガールだった時代があるの」と驚きました。

 

 というのも――、詳しくはドナ・トロイのキャラクター紹介を読んでいただくと良いのですが、New52期以前のドナは確かにワンダーガールという名前でヒーロー活動を始め、後にドナ・トロイと名乗ったということになっていました。

 

 しかしNew52期以降はワンダーウーマン(ダイアナ)を倒す兵器として作られたという設定になり、ダイアナとアマゾン族の記憶操作によりそのことを忘れ、セミッシラ島を離れてヒーロー活動を始めたということになっていたはずでした。ワンダーガールを名乗った時期があるとは思えなかったのですよね。

 

 この時、ドナが話している相手のBeast Boy (ビーストボーイ、ガーフィールド・ローガン)が1980年頃の印刷っぽいスタイルになっているコマが一コマ挟まれますので、ははあこれはNew52期以前のことも全部ひっくるめてドナが自分の経験として語っているということなのだな、と了解したのですが。

 

 どうも、このデスメタルのイベントの後はみんなNew52期以前の記憶も取り戻したということになっているようなので(詳しくはNOB-BONさんのブログ、アメコミ放浪記のこちらの記事をご覧ください)、その現象はデスメタル最終決戦前のこの時期にはすでに始まっていた――ということなんでしょうか。上に書いた、キャシーとの仲の良さもNew52期以前からの記憶が全部混ざった結果なのでしょうかね。 

 2021年6月現在、新たに始まったInfinite Frontier期でドナはTeen Titans Academyというシリーズ (Amazonのページはこちら)で若手ヒーローたちの先生として活動しているようなのですが。

 この格好いいリーダーシップとキャシーとの仲の良さをまた見せつけてほしいものです。