2022年11月20日日曜日

Nubia & the Amazons #1-#5 感想 -セミッシラ島名所ツアー -

  Infinite Frontier期が始まった2021年は、Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)は死後の世界を冒険していて不在、ダイアナの母でありアマゾン族の女王であるヒッポリタはダイアナの代わりに人間界でジャスティス・リーグに参加するためセミッシラ島を離れるという状況でした。 

 そのため、セミッシラ島のアマゾン族の女王に選ばれたのがNubia (ヌビア)です。

 彼女がセミッシラ島の女王として様々な異変に対処する姿を描いたのがこのNubia & the Amazonsというミニシリーズになります。

 筆者は1話ずつ購入して読みましたが、すでに単行本が出ているので今からならそちらを買う方が良いと思います。なお全6話ですが、第6話はイベント"Trial of the Amazons"の中のエピソードですので1話から始まったストーリーは5話で大体決着がつきます。

【基本情報】
Art by: Alitha Martinez, Darryl Banks
Written by: Vita Ayala, Stephanie Williams
発行年 2022年


公式サイトはこちら(※単行本の方です)

NUBIA & THE AMAZONS

Nubia has been crowned queen of Themyscira, but the new title also brings challenges. With the unexpected arrival of new Amazons, our hero is forced to reckon with her past and forge a new path forward for her sisters.



 アマゾン族といえば女性だけの一族ですが、では死者が出た場合に人口はどのように補われるのか。アマゾン族は不老不死とは言っても戦いなどで死ぬ人はいるわけです。

 この問題を現実的かつグロテスクなやり方で解決したのが New52期 Wonder Woman誌 (感想はこちら)でしたが、本作ではもうちょっと神話的かつ穏やかな方法で解決しています。

 なんでも、暴力的に殺された女性の魂がセミッシラ島の「魂の井戸 Well of Souls」というところに転生して出てくるそうです。とはいっても、暴力的に殺された女性の魂が全員セミッシラ島に転生できるわけではなく(そんな感じだったらあっという間にアマゾン族が増えて島に入りきらなくなってしまうでしょう)、何らかの事情で数百年に一度くらいの単位で転生してくる模様です。

 はっきりと記載されているわけではないのですが、女性側の事情で転生してくるかどうかが決定されるのではなく、セミッシラ島(を見守る神々)の側で「将来的にこういうタイプのアマゾン族が必要になる」ということで手ごろな魂(?)を送っているのかなあという印象を持ちました。

 

 アマゾン族に転生した女性たちは前の人生の記憶はほぼなく、アマゾン族としての修業を積む過程で自分の得意なことを見つけて役割を見出していくようです。これは読んでいて、何も得意なことがなかったらどうすればいいんだろうという感想を抱いてしまいました。たぶん、魂が転生する前にアマゾン族向きの女性たちが選ばれているのではないかなという気がします。アマゾン族の生活に向いていないタイプが転生してしまったら辛すぎるので。

 さて、ヌビアも比較的最近転生してきたアマゾン族の一人で、彼女は戦士として優れていたのでセミッシラ島の怪物を封じる"Doom's Doorway"を守り続けてきました。

 彼女が女王になってしばらくしてから、突然Well of Soulsから複数の新しいアマゾン族たちが現れます。彼女たちをセミッシラ島での生活に馴染ませつつ、Doom's Doorwayからメドゥーサが逃げ出したらしいという事態に対応するヌビアの姿が見どころになっています。

 

 読んでいて、ヒッポリタとヌビアの違いをアマゾン族たち(そして読者にも)に印象付けることが目的の作品なのかなと思いました。本作で登場するヌビアの武器は、 The Staff of Understandingと呼ばれます。Staffという言葉は辞書をひくと「こん棒」と出てくるのですが、パーツがしなやかに曲がるみたいでいわゆる「こん棒」っぽくはありません (下図)。何か適した訳語があれば筆者まで教えてください。 

 

Staff of understandingを持つNubia

 「理解」と名のついた武器を手にしたヌビアは、メドゥーサについても理解しようとします。そしてそれが物語を終結へと導いて行きます。ヒッポリタ女王であったら違う決断をしていたのだろう――と読者に感じさせつつメドゥーサのエピソードは終わります。


 そしてこの作品、"Well of Souls"とか"Doom's Doorway"とか、セミッシラ島のポイントとなる場所について読者に分かりやすく説明を入れてくれるためにセミッシラ島の観光案内的にも楽しめます。Doom's Doorwayなんて観光で行く場所じゃないだろうというのはさておき。セミッシラ島を舞台にしたストーリーをしっかり描いてくれると、アマゾン族たちの生活が垣間見えて面白いなあと思った一作でもありました。