※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。
「実際には起こらない未来の物語を描く」コンセプトのFuture Stateシリーズで、Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)を主役にしたFuture State: Immortal Wonder Womanを読みました。遠い未来、死にゆく世界でのダイアナの物語です。なお、この感想はラストまでネタバレしています。
Written by:L.L. McKinney, Michael Conrad, Becky Cloonan
Art by: Alitha Martinez, Jen Bartel
発行年 2021年
公式サイトはこちら。
遠い未来。かつてダイアナと共に戦った多くのヒーローたちはすでに死亡し、宇宙の星々はThe Undoingと呼ばれる存在に次々と飲み込まれていた。ダイアナは生き残ったわずかなアマゾン族とともに地球から逃げることを考えるが、アマゾン族が戦いを選択したためダイアナもそこに留まることにする。やがて、そこに敵がやってくるのだった――
というのがあらすじです。直接地球にやって来る最初の敵は惑星Apokolipsの主、DarkseidなのですがThe UndoingはあくまでDarkseidとは異なる存在です。すべてに死をもたらす存在、ということでDarkseidの思想とは一致していそうですが、別に協力関係にあるわけではなさそうです。
The Undoingは意思をもった邪悪な存在というよりも自然現象のように見えました。もう世界は寿命を迎えたのです、というような。ダイアナの周りの、ごくわずかの生き残った人々もそれぞれの形で死を迎えていきます。最後にダイアナが出会うのがSpectre (スペクター)で、彼はダイアナの前で消えていくときに
"I... I COULD HAVE DONE BETTER."
「もう少しうまくできたかもしれないのに」
と後悔を口にします。それに対してダイアナが、
"NO, MY FRIEND. YOU DID ONLY WHAT YOU NEEDED TO DO."
「いいえ。あなたは求められたことをちゃんとやった」
と答えるのは優しいですね。
全体を通してみると、ダイアナが世界の死を受け入れるための話に見えます。上にも書きましたが、The Undoingは邪悪な存在でもなさそうですし。
The Undoingが邪悪な存在でないとするとダイアナはなぜ死を受け入れるためにあれこれじたばたするのか――という疑問もわきますが、「自分以外の全員がいなくなってから」という思いがあったのかもしれません。生きものが一人でも残っていたら、その誰かのために希望を掲げるのがダイアナという存在なのかなと思いました。スペクターが、世界にはもう自分たち二人しか残っていないということを告げ、その彼も消え去ったからこそダイアナもようやく死を受け入れることができた、というように見えました。
そして死んだ世界は再び蘇ることが示唆されて物語は終わります。蘇った世界で、再びワンダーウーマンは誰かの希望であり続けるのだろう――と思えるお話でした。
なお、ダイアナの話のほかにNubia (ヌビア)がワンダーウーマンとして活躍する話も収録されています。ヌビアが着けているティアラが実は不思議な力を秘めているアイテムだったのだ――というお話です。ヌビアは今後アマゾン族がらみのイベントで活躍すると思いますが、この辺の設定は使われるんでしょうか。気になるところです。