2022年5月6日金曜日

Wonder Woman by George Perez Vol. 1 感想 -現在につながるスタンダード-

  Wonder Woman by George Perez Vol. 1を読みました。Perezによるこのシリーズは、Crisis on Infinite Earths (感想はこちら)の事件により様々な設定が変更になったことを受け、セミッシラ島に住むアマゾン族の王女であるWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)の物語を改めて語りなおしたものになっています。

 現在まで続くワンダーウーマン像の基礎を作ったシリーズという印象を受けました。

 なお、この作品の第1話はワンダーウーマンアンソロジー(感想はこちら)にも収録されていますのでそちらで雰囲気を掴んでみるのもおすすめです。

 

【基本情報】
Written by: Len Wein, Greg Potter, George Pérez
Art by: Bruce Patterson, George Pérez
Cover by: George Pérez
発行年 2016年 (※連載されていたのは1987年頃)

公式サイトはこちら。



 この巻には、

  • アマゾン族とダイアナの簡単な過去の説明
  • 戦神アレスとの戦い
  • ダイアナがアメリカでワンダーウーマンとして知られるようになる話(チーターとの戦い)
  • 神から与えられた試練に立ち向かう話

 の、ざっと4つのエピソードが収録されています。

 

 ダイアナについて知るためには最初の「簡単な過去の説明」が有用です。ちなみにこのエピソードがワンダーウーマンアンソロジーに収録されています。

 

 このエピソードによると、

  • アマゾン族たちは男性により死んだ女性の魂が復活した存在
  • ダイアナはもともと女王ヒッポリタのお腹にいた子

 だったそうです。ギリシアの神々の導きによりアマゾン族たちは繁栄しますが、ヘラクレスの行いにより再び苦難の道を歩むことになります。

 そしてダイアナや女王ヒッポリタの行動がヘラクレスをも変容させていくのだった――と、物語は展開していきます。

 

 一冊の本としてこの作品を見た時、魅力的なのは上に書いたようにいくつかのエピソードに分かれていながら、それぞれの物語が少しずつ関係していることでしょうね。

 アレスとの戦いはスリリングなお話、チーターとの戦いはアメリカで知り合った友人たちと友情を深めるお話(ここでダイアナがブラックキャナリーのことを戦士として評価しているのが嬉しいです)、神による試練はダイアナの冒険譚――と少しずつテイストの違うエピソードなのですが、ゆるく関連しています。

 

 たとえばダイアナがセミッシラ島の外に出るきっかけとなったのはアレスとの戦いの関係でスティーブ・トレバーの飛行機がアマゾン族の島に不時着したことですが、実は彼の母親はかつてセミッシラ島に不時着し、アマゾン族と共に戦った戦士であることが神による試練の中で明らかになる――という展開になっています。こうしたつながりが感じられると、本全体としてぐっと完成度が高まるような気がして筆者は好きです。

 

 また、スティーブとダイアナの関係は運命の相手ではあるが恋人ではないというものでこのくらいが筆者にとってはベストかなあとも思いました。恋人になってラブラブ状態が続くならともかく、色々あって別れるのも辛いですしどちらかが片思い、というのも辛いですし。

 

 もう一つ付け加えますと、この本にはギリシア神話の神々がたくさん出てくるのですがオーソドックスな描写になっているのでギリシア神話ファンも楽しく読めると思います。よく知っている神々がいつもの雰囲気で出てくる、という感じでしょうか。