2022年5月11日水曜日

Aquaman (2011-2016) Vol. 1: The Trench 感想: もののあはれ

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。 

 2011年から始まったNew52期に連載されたAquaman誌のVol. 1を読みました。アトランティスの王Aquaman (アクアマン、アーサー・カリー)とその妻Mera (メラ)がメインになっています。 

【基本情報】
Written by: Geoff Johns
Art by: Joe Prado, Ivan Reis, Eber Ferreira
Cover by: Joe Prado, Ivan Reis
発行年 2012年


公式サイトはこちら。



 アトランティスの王としての地位を捨て、メラと共に地上で暮らすアクアマン。ヒーローとしても知られる彼だったが、地上人たちは二人のことを軽く見ていることが多かった。そんな折、海から怪物たちが現れ人々を襲うという事件が起きる。二人は怪物たちを撃退するのだったが、怪物たちの存在は更に大きな事件へと繋がっていく予感を与えるのだった――というのがあらすじです。


 読んでいて、ヒーローコミックの爽快さというよりは切なさが印象に残る一冊でした。

 まずアクアマンとメラですが、彼らは地上の人間たちに非常に軽視されています。これがヒーローになりたての新米だとか、そもそも客観的にみてヒーローとしての実力が足りないキャラクターならともかくそんなことはないわけで。読んでいて少し辛くなるところがあります。とはいえ、アクアマンとメラにも地上人のご近所さんたちと仲良くなりたい、という気持ちがさほどなさそうで「地上人は理解できない」と思うにとどまっているのでそこまでしんどい描写ではないのですが……。

  なお、メラはアクアマンを殺すよう教育されていたというエピソードも登場するのですが、これについては少し触れられるだけでさほど掘り下げられません。次巻以降で語られるのでしょうか。

 メインの敵である、海溝から出てくる怪物たちももの悲しいです。

 ここからはネタバレになりますが、

 

 彼らは蟻や蜂のような生態の生き物であると描かれており、人間に対する悪意というよりも食べ物を求めて人間を襲ったことが明らかになります。アクアマンが彼らの女王を殺してしまったので遠からず彼らは滅亡することになるのですが、ほかに何か共存できる方法はなかったのかな、という気持ちになってしまいます。

 読んで高揚するというよりは「こういうことも世の中にはあるんだね……」と暗い声でつぶやきたくなるような一冊です。