※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。
Suicide SquadのVol. 5を読みました。本来Vol. 4を読んでからVol. 5を読むべきですが、Vol. 4はCheckmate誌との共通イベントが主に収録されている関係で、話の半分くらいはCheckmateの話になっているようです。よく知らないメンバーの話を延々読むのはさすがに辛い……というわけで、一冊飛ばしてVol. 5の感想です。
Vol. 4までの流れで大事なこととして、
- Rick Flagは死亡
- Amanda Waller (アマンダ・ウォラー)は表向きSuicide Squad (スーサイド・スクワッド)の指導ポジションから外れる
- 新メンバーが加入
ということが挙げられます。アマンダの件に関してはあくまでも「表向き」ですが、アマンダをスーサイド・スクワッドから外そうという政治劇はこの巻でも続いていきます。
Written by: Kim Yale, John Ostrander
Art by: Various, Luke McDonnell, Grant Miehm, John K. Snyder, III
Cover by: John K. Snyder, III
発行年 2016年 (単行本の発行年。連載されていたのは1989年頃)
公式サイトはこちら。
この巻に収録されているのは主に、
・これまでメンバーの一員として活躍していたDuchessが、実はApokolipsでDarkseidに仕えていたFemale Furiesの一員、Lashina (ラシーナ)であることが分かり、彼女がApokolipsに復帰し地位を取り戻すためにみんなが巻き込まれる話
・テロ組織LOAと戦う話
の二つです。
Duchess = Lashinaという疑惑は以前の巻でも描かれていたのでそれ事態は驚きではなかったのですが、物語は意外な展開を見せます。
以下、ネタバレを含む感想です。
ラシーナがApokolipsに復帰するにあたっては、現在のFemale Furiesのリーダーを殺さなければならない、そのためにはリーダーの周りの有象無象を蹴散らすための人員が必要――という理由で、彼女はスーサイド・スクワッドのメンバーを強制的に連れていきます。そしてメンバーの中にはアマンダ、Floという普段は前線に出ないメンバーも含まれています。
Floはコンピューター技師で、部隊では情報収集担当でした。犯罪者ではなさそうです。Oracle (オラクル、バーバラ・ゴードン)とも、コンピューターを介したやりとりだけですが親しくなっているようです。
これまで彼女は、メンバーのひとりであるBronze Tiger (ブロンズ・タイガー、ベン・ターナー)に片思いしていることが何度も描かれてきました。彼はVixen (ビクセン、マリ・マッケイブ)といい雰囲気なのです。彼に近づくため、自分も前線でミッションをこなすことを夢見るFloでしたが、初めて出た前線がApokolipsだった――という意地悪な展開になっています。
結局ブロンズ・タイガーの思いが自分に向けられることはないことを突きつけられたまま、戦いの中で死亡するFlo。
読者としては「勘違いでもいいから、最後にちょっとだけブロンズ・タイガーが優しくしてくれる場面があってもいいんじゃない!?」と言いたくなりましたが、この作品はそういうところで容赦がないです。
Suicide Squadという部隊名ですから、ミッションのたびにメンバーが死ぬかもしれないことは読者としても織り込み済み――ではあるのですが、まさか非戦闘要員がここで死ぬとは思わず。まして、今まで描いてきた彼女の片思いが何一つ報われないことになるまま死ぬなんてことも思わず。予想外の展開に呆然とせざるを得ませんでした。
メンバーは一応地球に戻ってくるものの、お通夜のような空気になります。無茶苦茶な上司と思えるアマンダも、ちゃんと死は悼むのですね。
……と、Apokolipsでの戦いの余韻の中でテロ組織LOAとの戦いが始まります。とはいえこのエピソード、アマンダからスーサイド・スクワッドの実権を奪おうとする勢力との政治劇の方が印象が強いです。
この巻では実質的にスーサイド・スクワッドのリーダー的存在であるブロンズ・タイガーはアマンダとの関係が強すぎるという理由で追い詰められ(ここで彼の過去がかなり詳しく語られるので彼のファンは必読です。O-senseiという日本人に武道を学ぶことで強い怒りをコントロールできるようになったらしいです)、アマンダもLOAの幹部を殺害したことで逮捕されチームは解散――ということになりますが、これ自体がアマンダの作戦っぽいので、次の巻以降どういう展開になるか全然予想がつかないですね。
全体的に、アマンダの魅力爆発な一冊でした。普段は厳しくもメンバーが死んだり傷ついたりするとちゃんと起こり、Apokolipsでは銃をとってGranny Goodnessとも戦い、政治的な戦いもこなす――決して善人ではないですが、魅力のあるキャラクターだと思います。