2018年12月24日月曜日

Bombshells United 感想

 Bombshells Unitedを読みました。DC Comics: Bombshells(感想はこちら)の続編になります。

【基本情報】
Writers: Marguerite Bennett
Artists: Various, Marcelo Di Chiara, Marguerite Sauvage, Aneke, David Hahn, Sandy Jarrell, Stephen Byrne, Mirka Andolfo, Richard Ortiz
Cover by: Terry Dodson, Rachel Dodson
発行年 2017年

公式サイト (1巻)はこちら。



DC Comics: Bombshells(以下Bombshells)の続編ではありますが、だいぶ構成が違います。Bombshellsの方は複数の女性ヒーローが絡むいくつかのストーリーが並行して描かれていたのに対して、こちらのUnitedでは、

・Wondergirls (Donna Troyなど) とWonder Woman (Diana of Themyscira)の話
・Batwoman (Kate Kane)とRenee Montoyaの話
・地球外から攻めてきたAPOKOLIPS軍との戦いの話

の概ね3つのストーリーが順番に描かれます。
複数の物語が絡み合って大きな流れを生むダイナミズムは減少した半面、話があちこちに飛ばないので読みやすくなりました。イメージとしては、大河ドラマの後に1時間くらいの単発スピンオフドラマが3本作られたという感じです。

Bombshellsでは登場しなかったキャラクター達を積極的に登場させているのも特徴です。WondergirlsやBlack Canary、Talia al Ghulなどなど。ただ前作に登場するキャラクターと比べてどうしても活躍シーンは少なくなってしまっていると思います。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***

3つのパートそれぞれの感想を書いていきます。

Wondergirls (Donna Troyなど) とWonder Woman (Diana of Themyscira)の話

大変骨太な物語だと思いました。第二次世界大戦下、収容所に送られる日系アメリカ人たちをWondergirlsとWonder Womanが助ける話です。ただ助けてどこか安全な場所に連れていくだけではなく、彼らが住んでいた町に戻し、その町の住人達にも彼らが受け入れられるようにするというところまで実行します。

日系アメリカ人の救出を非難する敵とのやり取りが印象的です。

"YOU WERE MEANT TO BE OURS, WONDER WOMAN... ...OUR AMERICAN HERO. (後略)"
"IT IS AMERICANS I FREE FROM AN UNJUST IMPRISONMENT... I AM THE STRANGER TO YOUR LAND. (後略)"



「お前は我々のものでなければいけない、ワンダーウーマン……我々のアメリカのヒーローに」
「私はアメリカ人を不公正な収容から助けているのよ……私はあなたの国ではよそ者だわ」
という感じでしょうか。確かに、セミッシラで生まれ育って大人になってからアメリカに来たワンダーウーマンはどこからどう見てもよそ者(移民?)ですね。
この話は2017年に公開されているのですが、移民排斥などの問題を踏まえているのかな……と思いました。

Batwoman (Kate Kane)とRenee Montoyaの話

このエピソードはまさかの展開でした。前作で、スペインで暮らしていた当時恋人だったケイトとレニーはジェイソンと言う10歳くらいの男の子を息子みたいに可愛がっていた、そして彼が殺されたことで二人も別れたというエピソードは出てきていたのですが、

まさかのジェイソン復活。
そして明かされる、「息子みたいに可愛がっていた」の本当の意味。

本当の意味と言っても、前作を読んだときに筆者が勘違いしていただけなのですが。
魔法の泉パワーでジェイソンが甦ってきます。生き返ったジェイソンと二人の様子が描かれることで分かるのは、

・ジェイソンも二人のことを「ママ」と呼び、母親のように思っていた。
・三人は一つ屋根の下で一緒に暮らしていた。

ということです。前作の話から、大学生くらいの女性カップルが近くに住む男の子を可愛がって勝手に息子みたいと思っていたんだろうなという想像をしていたんですが、ここまで完全に家族になっていたとは思いませんでした。

生き返ったジェイソンとかつてのような三人での暮らしを楽しむケイトとレニーですが、やがてジェイソン自身が二人をそれぞれの戦いの場へ戻すために背中を押します。そしてジェイソン自身は、彼の本来いるべき場所へと戻っていきます。

ケイトとレニーはそれぞれ別の戦いへと向かうのですが、かつてのような喧嘩別れ(というか、ケイトが逃げ出した)ではなく、良い別れ方をした上で目的地へと向かっていきます。

ケイトはヒーローですが、前作の時からその時々の恋人に依存しているように見えていました。このエピソードで彼女も過去に折り合いをつけることができるようになり、長い逃避行を終えることができたのだろうと思います。

地球外から攻めてきたAPOKOLIPS軍との戦いの話

このエピソードは、かなり駆け足でした。前半のバットガールやブラック・キャナリーたちが活躍する展開は丁寧に描かれています。敵からの攻撃をどう防いでどう無効化するか、ヒーローたちが見せた回答も綺麗だったと思います。しかし、APOKOLIPS軍が到来してからというもの大急ぎで話が展開していきました。

筆者の好きなザターナもこのパートで登場し活躍するのですが、登場したと思ったらあっという間に去っていったという印象です。もう少しザターナと周囲の人たちの葛藤を描いてほしかったです。ここを長くすると話が長くなりすぎるという判断かもしれないのですがそれでも。いい見せ場を貰ったとは思うのですが、もう少しゆっくり描いてもらえたらなと思いました。

最後の一話を使って、各キャラクターごとのエピローグも描かれます。1コマくらいずつです。戦争は終われど、各キャラクターはそれぞれ戦い続けている(たとえば、幸せな家庭を持つといった形で)ということが分かるエンディングになっています。

前作今作合わせて、大変面白い作品だったと思います。大勢のDC女性ヒーローたちに親しみが持てたのも大きな収穫でした。