2021年12月11日土曜日

Justice League (2011-2016) Vol.7-Vol.8: Darkseid War Part 1/Part 2 感想 -Rebirth期への種まき-

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


  女性グリーンランタン、Jessica Cruz (ジェシカ・クルズ)がコミックに初めて登場するエピソードはNew52期Justice LeagueのVol. 6 (感想はこちら)に収録されています。ヒーローが悪者になった世界であるEarth-3のPower Ringがつけていた不思議な指輪がジェシカを見出し、強い恐怖心を持つ彼女を持ち主として選んだのでした。

 

 物語は更にDCコミックス界の最大の悪役ともいえるDarkseidとヒーローたちとの戦いに進む――と見せかけて、様々な陣営の思惑が入り乱れる乱戦へと展開していきます。ジェシカもヒーローたちとともに頑張るのでした。

 

【基本情報】
Written by: Geoff Johns
Art by: Phil Jimenez, Jim Lee, Jason Fabok, Scott Williams, Scott Kolins, Kevin Maguire, Jerry Ordway, Francis Manapul, Jason Fabok
Cover by: Jason Fabok
発行年 2016年

公式サイトはこちら。



 Darkseid Warとサブタイトルのついたこの2冊ですが、物語のきっかけはセミッシラ島でダイアナが生まれた夜に遡ります。ゼウスと女王ヒッポリタの娘であるダイアナが誕生したその時、セミッシラの洞窟ではMyrina Blackという一人のアマゾン族がDarkseidの娘Grail (グレイル)を産んでいたのでした。

 もともとMyrinaはアマゾン族の暗殺者だったようなのですが、ダークサイドを殺し世界を平和にするためにグレイルを産んだようです。……ということはこのストーリーの以前に彼女がダークサイドを誘惑するような場面があったものと思われますが、特に描かれてはいません。

 ともかくグレイルは生まれ、Myrinaとグレイルは嵐の海を二人で船に乗りセミッシラを離れます。Myrinaはグレイルが力をコントロールしてダークサイドを殺せるよう教育しますが、グレイルの力のコントロールには苦労します。

 そんな中、ダークサイドに対抗できる存在としてAnti-Monitorを呼び出せばいいのだということになり、グレイルはAnti-Monitorを呼び出して地球で戦わせます。

 

 一方、ヒーローチームJustice League (ジャスティス・リーグ)は地球の平和を守るために、またAnti-Monitorに滅ぼされた世界であるEarth-3のCrime Syndicateというチームは復讐のためにAnti-Monitorと戦おうとします。……とまあ、さまざまな陣営の思惑が入り乱れる戦いになります。

 

 以下、ラストの展開までネタバレをしながら感想を書いていきます。

 

 

 

 ダークサイド vs Anti-Monitorが物語の最初の山場になりますが、怪獣大決戦という趣で非常に迫力がありました。ジャスティスリーグはどちらと戦ったらいいかも分からぬままに戦いの中に突っ込んでいくのですが、正直ここは人々の避難に務めて体力を温存しておいた方が良かったと思います。

 その戦いの結果ダークサイドは殺され、彼が持っていた神の力が放出されます。結果としてジャスティス・リーグのメンバーが神の力を得ることに。

 そしてグレイルはダークサイドの最大の武器ともいえるAnti-Life Equation (反生命方程式)の力を手に入れます。さらに、Crime Syndicateの一員であるSuperwomanが産んだ子供の能力(パワーを吸収する)を利用してヒーローたちに与えられた神々の力を奪い、自分の手下としてダークサイドを復活させるのですが、母とワンダーウーマンの尽力により失敗し、赤ん坊に戻った父とともにその場を逃れ、父を愛し育てることを決意するのだった――というお話になっています。

 

 グレイル視点で考えると、父を殺すように母に教育されて育って実際に父殺しを行ったものの戦いの場で母を殺すことになり、最終的には父を愛することを学んだ――といういいお話なのか何なのか――という展開になっています。

 Rebirth期Wonder Woman Vol. 6 (感想はこちら)で登場し、お父さんを育てようとしていたグレイルですが、このエピソードがもとになっていたのだなと思いました。また最終盤ではワンダーウーマンに双子の弟がいることも明かされ、これもRebirth期Wonder Woman誌に登場するJasonにつながっています。

 Wonder Woman誌はRebirth期とNew52期で完全に断絶してしまっている印象ですが、New52期のJustice League誌でまかれた種はちゃんと育てていたのだなと意外な気持ちになりました。 

 

 そして、ジェシカ・クルズです。彼女は指輪のもともとの所有者だったVolthoomのパワーに負け指輪の中へと押し込められるのですが、お、これはRebirth期Green Lanterns誌Vol. 8 (感想はこちら)に登場した指輪の中の世界――と思いました。こっちはこっちで、New52期の設定を受け継いでいたのですね。

 ジェシカは自分の身体のコントロールを取り戻し、Flashを助けて死亡したと思われましたが息を吹き替えし、改めてグリーンランタンの指輪を手に入れることになります。ということで晴れてグリーンランタンになってジェシカですが、彼女の物語がじっくり語られるのはRebirth期Green Lanterns誌になるわけで――本当に、Rebirth期のためにいろいろな種まきをしているような作品でした。

 Rebirth期のいろいろなコミックを読んだ後にこの本を読んだからこういう感想になるのですけどね。