2021年6月12日土曜日

DC Pride (2021-) #1 感想

※このシリーズの他の作品への感想はこちらをご覧ください。 


 6月はPride月間といい、様々なセクシュアリティを応援することになっているそうです。DCコミックス社もPride月間に合わせてLGBTQのキャラクターをメインにしたアンソロジーを出版しました。表紙にあるように、レズビアンであるBatwoman (バットウーマン)とQuestion (クエスチョン、レニー・モントーヤ)が主役の短編も収録されていますので読んでみました。 

【基本情報】

Writers: Marc Andreyko, Vita Ayala, Sina Grace, Sam Johns, Danny Lore, Nicole Maines, Steve Orlando, Mariko Tamaki, James Tynion IV, Andrew Wheeler

Pencils: Kris Anka, Stephen Byrne, Sophie Campbell, Klaus Janson, Mildred Louis, Travis Moore, Trung Le Nguyen, Skylar Patridge, Amy Reeder, Nick Robles, Ro Stein, Rachael Stott, David Talaski, uciano Vecchio, Kevin Wada, Brittney Williams

Inks: Kris Anka, Ted Brandt, Stephen Byrne, Sophie Campbell, Klaus Janson, Mildred Louis, Travis Moore, Trung Le Nguyen, Skylar Patridge, Amy Reeder, Nick Robles, Rachael Stott, David Talaski, Luciano Vecchio, Kevin Wada, Brittney Williams

Colored by: , Enrica Eren Angiolini, Kris Anka, Ted Brandt, Stephen Byrne, Sophie Campbell, Rex Lokus, Marissa Louise, Dave McCaig, Trung Le Nguyen, Nick Robles, Alejandro Sanchez, Ro Stein, David Talaski, Jose Villarrubia, Kevin Wada, Brittney Williams

Cover by: Tamra Bonvillain, Jim Lee, Scott Williams

発行年 2021年

公式サイトはこちら。


Pride月間をテーマにしたDCコミックスによる動画もあります。全体としてはBook club (現時点で日本からは入れません)の宣伝ですが。



 LGBTQのヒーローアンソロジーということで、バットウーマンやレニー・モントーヤ、ハーレイ・クインとポイズン・アイビーなどを主役にした短編が並んでいます。筆者がよく知らないキャラクターを主役にした短編もあったのですが、キャラクターの紹介がないのは残念なところです。

 

 読んで印象的だったのはバットウーマン主役の短編とレニー・モントーヤ主役の短編でした。以下、簡単に感想を。

 

バットウーマン主役の短編

 双子のベスとケイトの遊びから始まり、ベスがいなくなった後のケイトの心情を描く作品です。もともとベスの方がお母さんのメイク道具をこっそり持ち出してきれいにメイクするのが上手で、ケイトが一人でメイクをしてみようと思ってもうまくいかず、"the wrong side of the mirror" (鏡の間違った側)に自分がいるような気がする――という物語になっています。

 ベスという自分の相棒を失ったケイトの思いと、LGBTQ(ケイトの場合はレズビアン)であるために「自分が間違った存在であるような気がする」というケイトの思いが重なって描かれています。

 "wrong side"という言葉は、LGBTQでなくても自分が集団に馴染めない、周りの人たちが普通にこなしていることが自分にだけはできない、という経験をした人には響くのではないでしょうか。

 この短編集の冒頭を飾るのにふさわしい一作だと思います。

 

レニー・モントーヤ主役の短編

 顔のないマスクをかぶった探偵・Questionとして活躍するレニーが行方不明になったある女性を探すという物語です。

 行方不明になった女性がなかなか上手で、レニーが翻弄されるお話になっています。ゴッサム市警の刑事にしろ、探偵Questionにしろ、レニーはゴッサムの人たちを助けるために現場で頑張っている方が好きだな、と思ってしまう短編でした。The Next Batman: Second Son (感想はこちら)で描かれたゴッサム市警本部長のレニーが方向性はともかく頑張っているのはわかるのですが、また探偵に戻ってほしい……とついつい思ってしまう一編でした。