2021年9月2日木曜日

Suicide Squad (1987-1992) Vol. 2: The Nightshade Odyssey

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 動物の力を使って活躍するヒーロー、Vixen (ビクセン、マリ・マッケイブ)ですが一時期は犯罪者を中心にした使い捨て部隊Suicide Squadに所属していたこともあるようなので、部隊に入った経緯が描かれているストーリーを読んでみました。

 

【基本情報】
Written by: Various, John Ostrander
Art by: Keith Giffen, Luke McDonnell, Various
Cover by: Jerry Bingham
発行年 2015年(※単行本の発行年。連載されていたのは1988年頃)


公式サイトはこちら。


 読み始める前は、「いろいろキャラクターが登場する割にVixenしか思い入れのあるキャラクターがいないな……」と、最後まで読み通せるか心配だったのですが、読み始めてみると楽しく読むことができました。

 Vol. 2ということもあり、「アメリカ政府の偉い人(公的な地位についているのか、闇のフィクサー的なポジションなのかは不明)らしいAmanda Waller(アマンダ・ウォラー)が犯罪者を組織して公にはできない仕事をさせている」くらいの知識で十分読むことができます。 

 DCコミック世界ならではの「じつはこの地球の他にもたくさんの世界が存在するのだ」といった展開にもあまりならず、スパイものや麻薬組織との戦いものとして楽しく読むことができました。 

 Suicide Squadを主役にすえた作品を読むのは初めてだったので(Justice League vs Suicide Squad (感想はこちら)やKanataを中心にしたスピンオフ(感想はこちら)はちょっと違うし)、意外に思ったところもいくつかありました。

 

  •  Suicide Squadは犯罪者以外のメンバーもそれなりにいる。半分くらい? 各自それなりに訳あり(Vixenもそう)でウォラーに協力しているっぽい。ミッションを勝手に離脱すると爆発する腕輪はつけていない。 
  •  Suicide Squadのメンバーは固定ではない。特に犯罪者のメンバーは、ベル・リーブ刑務所に収容されている人の中からミッションの内容に応じて選ぶ感じ。これはウォラーからすればとても合理的。

 

 読んでいて感じたのは、このコミックはアマンダ・ウォラーという存在が魅力的なんだなということでした。この一冊を読んだだけでは彼女がSuicide Squadを率いる動機は良く分からない――政府内での権力を掌握したいという本人のエゴかもしれないし、一応は愛国心なのかもしれない――のですが、当時のアメリカ政府内で黒人であり女性であることで苦労していそうで、読んでいて「善人とは言えない人だけど頑張ってほしい」という気持ちになることができます。

 

 この「善人とは言えないかもしれないけど頑張ってほしい」という気持ちはSuicide Squadのメンバーの大半に抱くことができるので、それがするする読めた理由として大きいかもしれませんね。よく知らなかったヴィランのキャプテン・ブーメランにさえも「うるさいけれど憎めないおじさん」という感想を持ちました。

 

 

 さて、肝心のビクセンがチーム入りした経緯です。

 

 彼女はこの少し前までJustice League of America (JLA)のメンバーだったようなのですが、大統領にチームの解散を命じられ、さらに仲間が2人殺されたことで大いに傷ついてヒーロー稼業からは足を洗い、モデル専業に戻っていたようです。

 ところが海岸での撮影の際にたまたま麻薬の取引を目撃してしまったということで仲間たちが殺され、復讐のためウォラーに協力を依頼した――というところからSuicide Squadとの関係が始まります。

 本来このミッションだけで終わるはずだったのかもしれませんが、殺人犯と対峙した際動物のパワーを解放したことで怒りに身を任せて犯人を殺してしまうことになります。ビクセンはこのことにショックを受け、自罰的にSuicide Squadに入るのでした、という展開になっていました。

 

 この後のエピソードではJLA解散後にJustice League Internatinal (JLI)のリーダーになったMartian Manhunter (マーシャン・マンハンター)とビクセンが再開するシーンが描かれます。「自分はSuicide Squadの犯罪者たちと何も変わらない」というビクセンに対して「殺人を後悔しているということは、他の犯罪者たちとは違う」と寄り添うマーシャン・マンハンターは本当にいい仲間です。なおこの頃、JLIではメンバーのバットマンがマンハンターの言うことを聞かずに苦労していたようでつくづく苦労人ですね。

 

 マーシャン・マンハンターと話して少し前向きになったビクセンですが、今後も当分Suicide Squadでの活動を続けていく模様です。