※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。
ヒーローともヴィランともつかないチーム、Secret SixのVol. 4を読みました。笑える場面もいろいろありましたが、シリーズ最終巻ということもあってか「夢の終わり」という感想になるラストでした。
ヒーローともヴィランともつかないチーム、Secret SixのVol. 4を読みました。笑える場面もいろいろありましたが、シリーズ最終巻ということもあってか「夢の終わり」という感想になるラストでした。
【基本情報】
Writer: Gail Simone
Artists: RB Silva, J. Calafiore
Cover by: Daniel Luvisi
発行年 2016年 (連載されていたのは2011年ごろ)
公式サイトはこちら。
Vol. 3の後半を飾ったCatman(キャットマン、トーマス・ブレイク)の事件からチームは二つに分かれていましたが、そのチーム同士で対決したり、再びレックス・ルーサーやScandal Savage(スキャンダル・サヴェッジ)の父であるVandal Savage (ヴァンダル・サヴェッジ)と関わることになったり、地獄に行ってスキャンダルのかつての恋人、Knockout(ノックアウト、ケイ)を蘇らせたりといろいろなことが起きます。
新しくチームに加わったKingsharkがかなり笑いの種を提供してくれたり、ヴァンダル・サヴェッジがルーサーに「娘のありのままを認めることこそ幸せへの道だ」と説得されたりとシュールな場面もあるのですが。
最終話を読んでしまうと全ての感想が最終話に持っていかれて最終話のことしか考えられなくなるタイプのお話でした。
一点だけスキャンダル・サヴェッジのファンとして大事なポイントを書き留めておきます。彼女が武器として愛用している長い鉤状の武器 (Lâminas Pesar)ですが、これは彼女が子供の時、お母さんが自殺した際に使ったものだそうです。お母さんが自殺したのはヴァンダル・サベッジ(スキャンダルの母を愛していた)への復讐のためで、彼は娘にこのことを忘れさせないよう母が自殺した時の凶器を武器として使うよう教えたそうです。
……スキャンダル、父のもとを離れた段階で別の武器を使うようにした方が良かったんじゃないでしょうか。
……そしてVol. 1の時、スキャンダルはお母さんを人質に取られて脅迫されていたような気がしますが……深く考えないでおきましょう。
さて、以下改めて最終話の感想です。ラストまでネタバレしています。
***ここからネタバレ***
Vol. 2以降ずっと、この物語はBane(ベイン)の物語だったのかもしれないと思わせる最終話でした。ベインはVol. 1には登場せず、Vol. 2でいつの間にかメンバー入りしています。メンバー入りまでの経緯は、少なくともこのSecret Sixシリーズでは語られていません。
彼はバットマンシリーズに登場する悪役で、バットマンの背骨を折ったこともある敵です。そんな彼ですが、このシリーズではパワーを増強する薬物もほぼ使わず、スキャンダル・サヴェッジのことを娘のように思って大切にしています。
ベインがスキャンダルを娘のように思うようになったいきさつも、とくには語られません。ただ何度も何度も、当然のように描写されるので読者はいつの間にか「ベインはこういうキャラクターだ」と読むようになっていきます。
スキャンダルたちはベインに恋人候補を紹介したりと、そんな方面での世話を焼くのでした。
Secret Sixはそもそも、三流ヴィランが集まってできたチームです。ベインは三流とは言えませんが、彼らがなんだかんだでチームでやっていっていたのは、仲間といるのが心地よかったからでしょう。しかし最終話に至ってベインは、仲間といるという環境が自分の感情にも影響を与えているのに気づきます。……遅くありませんか、と思いますが、やっと気づきます。
そして一度倒されたはずのバットマンが相変わらずファミリーに囲まれているのを見て、バットマンだけではなくファミリーも倒さねばならないと思うのでした。……それと同時に、彼自身も仲間と共にいてはいけないとある計画を練るのでした。
計画の結果、Secret Sixはヒーロー集団に囲まれることになります。破れかぶれになった彼らはベインの薬物を飲んで絶望的な突撃をしていきます。
ベインは、このシリーズでずっと薬物を飲むことを拒否していました。Vol. 2でスキャンダルが勝手に薬物を飲んでいた時には激怒しましたし、彼女をチームから外そうとしたのもそのことが原因です。そのベインが仲間たち――スキャンダルも含め――に薬物を飲むようすすめます。
彼はとっくに、Secret Sixのベインではなくゴッサムの悪役であるベインに戻る覚悟を固めていたとしか考えられません。
ほぼラストシーンでの彼の台詞は
"Goodbye, Scandal Savage."
です。彼はこのチームで、(どういうわけかは不明ながら)スキャンダルを可愛がったり仲間を思ったりすることでそれなりに人間らしい日々を過ごせていただろうと思います。それでも結局はベインであろうとします。そして彼が立てた計画に他のメンバーはなすすべもなく、Secret Sixとして過ごした日々は唐突に終わりを迎えます。
そう考えると、やはりこのSecret Sixという物語はメンバーそれぞれが束の間の「人間らしい日々」を過ごせたという夢のような時間を描いた物語だったと感じるのでした。