2019年3月28日木曜日

Reign in Hell #1-#8 感想

 ザターナが登場する"Reign in Hell"という作品を読みました。タイトルの通り、地獄での権力争いを描いた作品です。

【基本情報】
Writers: Greg Weisman, Kevin Van Hook
Pencillers: Jose Luis Soares Pinto, Joe Bennett
Inkers: Joao Paulo Pitombeira Maia, Belardino Brabo, JP Mayer, Sandro Ribeiro, Julio Ferreira
Colorists: Joe Bennett, Guy Major, Mariah Benes, Ed Benes, Belardino Brabo, Joe Prado
Cover by: Eddy Barrows
発行年 2008年

公式サイトはこちら (#1)。



ページ数のわりに読むのに時間がかかったお話でした。というのも、例えば序盤から"PURGATORY"という単語が頻出します。地名っぽいなと思いつつ、意味が分からないながらにしばらくは読んでいたものの、「これは単語の意味を調べないと話が分からない」と思い調べました。「煉獄」だそうです。これまで読んだアメコミではあまり出てこない単語でした。

また、「地獄といえば血の池地獄とか焦熱地獄とかいろいろあって獄卒がいて、人間は様々な責め苦を負わされるところ」という、筆者の地獄観も読み始めた当初とても邪魔になりました。この地獄観、考えてみれば仏教由来なのでしょうし、さらに和風アレンジがなされたもののような気がします。

この本の中での地獄観は、
・地獄はいくつかの地区に分かれている。各地区で得意分野があり、たとえば産業や軍事を担当している地区という風に分かれている。
・ある地区の支配者が別の地区に攻め入り、地獄の支配者となることを狙うこともある

というものです。普通の世界みたいですね。死後、地獄に行ってもこんな感じだと生きているときとあまり変わらないかもしれません。ちなみに、地獄の地図も表示されるのですが、どうみても現在の世界地図です。なにかの皮肉なのでしょうか。

この作品に描かれている地獄はアメリカでも珍しい地獄観のような気がしますが、よくわかりません。


さて。

お話としては、地獄で新たな支配者となろうとした者たちのために戦争が起き、現世にいる悪魔たちは強制的に地獄へと召喚される。ザターナは最初は傍観していたが、Blue Devilに頼まれ地獄へと向かう。他の魔法の使い手たちもそれぞれの思惑を胸に次々と地獄へと向かっていた。
一方、地獄ではザターナの父、ザターラが加わるレジスタンスも活動し、現在の支配者・支配者になろうと目論むもの・レジスタンスの三勢力が争っていた。ザターナ達現世の者たちは、地獄での争いに巻き込まれながらそれぞれの活路を見出そうとする――というのがあらすじです。

悪魔的な異形の者のデザインが好きな人にはおすすめだと思います。とにかく、悪魔をモチーフにしたキャラクターがさまざまに出てきます。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ*** 


この戦いで、現世のキャラクターたちは何を得られたんだろう……と思いました。地獄の人たちは、それぞれの権力争いで動いていたからいいとして。地獄の権力争いで現世で使う魔法にも影響があるかも、という話ではあったのですが、あくまでも「かも」であってすでに影響が出ていたわけではないんですよね。
現世のキャラクターの動きとはほぼ関係ないところで地獄の権力者が決定してしまったわけですから、魔法への影響が出るものなら結局出てしまうのでしょうし。
そんな中、ザターナは死んだお父さんと再会できたわけですが、またお父さんが死んでしまって(死者が死ぬってどういうこと!? となりますが、魂が消えてしまうようです)また悲しい思いをすることに。
ザターナのファンとしては、「地獄に行かないほうが良かったんじゃないかな」という気持ちになる作品です。

というわけで。地獄の住民に着目して読むと楽しめるお話だと思います。3つの勢力が争う中で、最後に笑うのは誰なのか。地獄を出られる可能性があっても、地獄にとどまろうとする人は何を望んでいるのか。こうしたポイントが楽しめました。