Batman: Urban LegendsのVol. 2を読みました。このコミックはゴッサム関係の様々なキャラクターを取り上げたアンソロジーという形式になっています。この巻はAmazonのページを見ると、Urban Legendsの#7-#10を収録したということになっているのですが、実際は前回感想を書いたOutsidersの話が入っていたりと収録順は結構前後しています。
Amazonのためし読みからも見えるのですが、この本の目次の画像は以下になりますので、これを見て読みたいエピソードが収録されているかどうかチェックするのがおすすめです。画像はクリックで拡大します。
Writer: Alyssa Wong, Brandon Thomas, Tim Howard
Artist: Vasco Georgiev, Cian Toemey, Raul Fernandez, Christian Duce
Colors: Rain Beredo, Alejandro Sanchez, Sarah Stern
Letteres: Becca Carey, Steve Wands
発行年 2022年
筆者がこの巻を買ったのはもちろん、Batwoman (バットウーマン、ケイト・ケイン)と双子の姉妹であるベス・ケインの話が入っているからですが他にも面白いエピソードはありました。
連載時に話題になった「Robin(ロビン、ここではティム・ドレイクのこと)がバイセクシュアルであることが明らかになった」というエピソードもこの本に収録されています。
この記事では、バットウーマンとベスの話を主に取り上げ、Nightwing (ナイトウィング、ディック・グレイソン)の話、未来のOutsidersの話を簡単に取り上げたいと思います。
・バットウーマンとベスの話
イベント"Fear State"の中のエピソードです。何者かにOracle (オラクル、バーバラ・ゴードン)のネットワークが乗っ取られ、Batgirl (バットガール、カサンドラ・ケイン)が人を殺したというフェイク動画が出回るゴッサムでバットウーマンはオラクルのネットワークを乗っ取った犯人の手掛かりを探ろうとするのだが……という話です。
この話、メインはベスとRed Aliceの話になっています。ここで一つ、人物関係を整理しましょう。
ベスはかつてバットウーマンの前にカルト教団を率いるボス"Alice"として立ちはだかるもバットウーマンにより救出され、カウンセリングを受けることになりました。その後一時期、"Red Alice"という名でバットウーマンの相棒的なヒーローとして活動していました (New52期Batwoman誌参照。感想はこちら。)
というわけでRed Aliceはヒーロー名……なのですが、この作品ではベスが悪役時代に名乗っていたのがRed Aliceという風に設定が変わっています。Aliceだと一般の名前みたいだからなんでしょうか、良く分かりませんが……。読んでいるときに間違えないようにしましょう。
さて、ベスはケイトと同居しつつカウンセリングに通っているのですが、自分の中に潜む"Red Alice"がいつ出てくるかと脅えることもしばしばあります。
そんな中で"Fear State"の事件が起き、他のバットファミリーとの連絡が取りづらい状況でベスは"Red Alice"に戻ったふりをして、かつての手下を動かそうとします。
ポイントは、自分の中のRed Aliceを恐れているはずのベスがわざわざ自分から、ケイトのために"Red Alice"の扮装を身に着けてかつての手下たちのところに戻っていくところですね。ケイトのためとは言っても賭けです。
果たしてベスは"Red Alice"を抑え込むことができるのか――というのが見どころになっています。
この物語自体が、ベスの回復の過程のようにも読めてとても面白かったです。ベスがかつてヴィランとして活動したのは事実ですが、それを否定するだけではなく「過去にそうしていた自分も確かに自分だった」と受け容れていく。ゆっくりとカウンセリングをつづけたからこそできたことなのではないかと思います。
また、現在はゴッサム市警本部長を務めるRenee Montoya(レニー・モントーヤ)が登場したのも筆者には嬉しい一作でした。Rebirth期Batwoman誌(感想はこちら)でまた付き合うようになったはずの二人ですが、Lois Lane誌(感想はこちら)で予想されたように読者の知らないうちに別れていた二人。
それでも、ゴッサム市警本部長という立場でありながらケイトのもとにわざわざ警告に訪れる姿に嬉しくなりました。
レニーが本部長の間は難しいと思いますが、また付き合ってくれないかなとは期待してしまいますね。
・Nightwingの話
バットウーマンの話と同じく、Fear State内のエピソードです。クリスマス、一人で戦うディック・グレイソンの話。Scarecrowの恐怖ガスの影響で、夢か現実か分からないものを延々見続けるという展開が良かったです。読者にも夢か現実か分からなくなったところで、ディックを助けに来るのがバットガール(カサンドラ・カイン)というのがなんだか納得の展開でした。カサンドラ、バットファミリーの中で一番とっつきにくい割に一番家族の中の誰かを失うのを恐れているような気がするのですよね。
・未来のOutsidersの話
前回読んだOutsidersの話の一応続きになるのだと思いますが、ほとんど繋がっていません。未来のOutsidersメンバーが悲惨な現状を回避するために過去に飛んで、歴史を改変しようとする話です。
未来のOutsidersメンバーに出会った過去(現在)のOutsidersが、困惑しながらも未来の仲間のことを信じている展開が良いなと思いました。
Outsiders、マイナーですがいいチームだと思うんですよね。強い信頼感とほどほどの距離感があって。もっと活躍の場を増やしてもらえないかなと思う一作でした。