2021年から始まったBatman: Urban Legendsの1話-3話を読みました。このコミックはゴッサム関係の様々なキャラクターを取り上げたアンソロジーという形式になっています。3話くらいで完結するものもあれば1話完結のものもあります。筆者は今回、Outsidersのエピソードを読みたかったので#1-#3を読んでみました。
アメコミのキャラクターはコミックごとにライターが変更することもあって、「このコミックとこのコミックの間に何かあったよね? でないとこのキャラクターはこんな風にならないよね?」と思うこともあるわけですが、Urban Legendsはそうしたギャップを埋めるエピソードを発表できるプラットフォームになるのかもしれません。
とはいえ、たとえば#3には殺し屋のLady Shivaのエピソードが一話完結で収録されているわけですが、
Lady Shivaのエピソードがありますということは一言も書いていないという状態になってしまっています。こうなると好きなキャラクターが出ていても見逃してしまうことが起き得るので、キャラクターを追いかけたいタイプのファンにはちょっと厄介なコミックになってしまっていると思います。
さて、この#1-#3に収録されているOutsidersはRebirth期Batman and the Outsiders (感想はこちら)の後の話で、登場するのはKatana (カタナ、タツ・ヤマシロ)、Black Lightning (ブラックライトニング、ジェファソン・ピアース)に加えて昔のOutsidersシリーズでチームメートだったMetamorpho (メタモルフォ、レックス・マンソン)です。
【基本情報】※ここで取り上げたスタッフはOutsidersのエピソードに名前がクレジットされている人のみです。
Artist: Max Dunbar
Colors: Luis Guerrero
Letters: Steve Wands
Editor: Dave Wielgosz
発行年 2021年
公式サイトはこちら (#1)。
日本で、何者かが放った刺客たちに襲われるカタナとブラックライトニング。実は、カタナの姑(死んだ夫であるMaseoの母)がカタナに怒っていたのだった。果たして一同は姑の怒りを鎮められるのか――というのがあらすじです。
あらすじにすると日本のホームドラマのようになっていますが、そうではないのです。Rebirth期のBatman and the Outsidersシリーズで「どう見てもお互いに魅かれ合ってるでしょ君たち」という関係になっていたカタナとブラックライトニングですが、実はカタナが持っていたSoultakerから亡き夫・Maseoの魂が抜け出していたらしく。カタナの心代わりではないかと問い詰めるお姑さん (Shioriさん)という話になっています。
……まあ、お姑さんの気持ちは分かりますがカタナさんもそろそろ新しい恋を見つけてもいいのでは……そもそもMaseoを殺したのは兄弟のTakeoなわけで、「あなたの息子がカタナさんを不幸にしたんですよ」とも言えるわけですし……ああでもこのお姑さんからしたらカタナさんは息子二人を狂わせた魔性の女……と思って読んでいたのですが、このお姑さんこんな格好ですし、
Batman: Urban Legends #2よりShiori Yamashiro (左) |
魔法か何かで怪異軍団を従えていますし、カタナさんと話す時にお茶に自白剤を混入しますし、どう見てもカタギではないですね。ヤクザだという意味ではなく、ヒーローとかヴィランとかに関わらない小市民的な生活とは遠い世界に暮らしていそうです。
Rebirth期Batman and the Oustsidersでは、カタナさんの先祖がもともとSoultakerと因縁があったことが語られていたわけですが、そんな血統に加えて山城家と関わりを持ってしまったことでカタナさんの小市民的な幸福は遅かれ早かれ奪われる運命になっていたのかもしれません。
TakeoとMaseoの両方から愛されるという事態にならなくても、Maseoとカタナさんの生活はどこかで破綻していたのではないかと思えてならないです。
余談ですがRebirth期Batgirl誌Vol. 1 (感想はこちら )では、沖縄で1940年代から犯罪者を倒すために戦っていたというChiyo Yamashiroさんという人が登場しています (下図)。この作品を読んだ時も思っていたんですけど、山城家のご親戚か何かなんでしょうかね。
Batgirl (2016-)#1より、Chiyo Yamashiro (Art by: Rafael Albuquerque, Written by: Hope Larson) |
ところで、肝心のカタナさんとブラックライトニングの恋愛ですが。お姑さんに向かっては「ブラックライトニングのことはあくまで友達として好き」と答えています。……いや、Rebirth期Batman and the Oustsidersであれだけアピールしておいてそれはないんじゃない? と思いました。