2022年9月28日水曜日

Aquaman (2016-) Vol. 5-6: The Crown Comes Down, Kingslayer 感想 -敵の敵は味方-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Rebirth期Aquaman誌のVol. 5-6を読みました。Aquaman (アクアマン、アーサー・カリー)を王位から追いやりアトランティスを掌握したCorum Rathとの最終戦争が描かれます。

 

【基本情報】
Writer: Dan Abnett
Artists: Various, Riccardo Federici, Robson Rocha, Kelley Jones
Cover by: Stjepan Sejic, Joshua Middleton
発行年 2018年


公式サイトはこちら (Vol. 5)



 王位を奪ったCorum Rathだったが、アトランティスの秘めた魔術への傾倒ぶりに次第に側近達からも危ぶまれるようになる。一方、アーサーの恋人であるMera (メラ)を次の女王にと考えるWidowhood (アトランティスの戦死した兵士の妻の会)はアーサーと共に魔法で弱ったメラを助け、地上へと逃がす。アーサーはWindowhoodやアトランティス最下層に住むギャングたちと共にCorum Rathの排除を狙うのだったが――というのがあらすじです。

 上に書いたようなストーリーで、メラは地上に逃げてしばらくお休みしているので彼女の影は残念ながら薄いお話になっています。とはいえ、このAquaman誌では語られないメラの大活躍を描いたのが Mera: Queen of Atlantis (感想はこちら)ですので、格好いいメラの姿を読みたい人はこちらがおすすめです。

 

 Vol. 4に引き続き、アトランティスの面々がそれぞれの立場から最も良い方法を画策する姿が見どころでした。そして結果的にそれは、共通の敵であるCorum Rathの前にアトランティス人が皆協力し合うという展開に繋がっていきます。平和を考えるアーサー一人では到底なしきれなかったことが為されたのは、皮肉なものです。

 筆者はこのVol. 5-6のエピソードの中で、Communder Murkの行動も好きでした。王直属の精鋭部隊を率いる彼は王に忠誠を誓っておりアーサーを討つのですが、アーサーに友情も感じていたため殺したと見せかけて逃がし、そのままおとなしくしていることを期待していたようです。

 とはいえ、ヒーローであるアーサーがおとなしいままのわけもなくMurkの目論見はもろくも崩れ去るのですが……。仕事と個人的な感情をうまく成立させる、人間っぽい人だなあと思いました。

 

 なお、Vol. 5の後半はCorum Rathとの一連の戦いとは全く関係のない、アーサーたちの見た夢の世界の話が収録されています。単行本を読んでいると突然全然違う話が始まるので戸惑ってしまうところはあるのですが、良い悪夢になっていて面白いエピソードです。