2022年8月3日水曜日

Justice League Odyssey (2018-) Vol. 4: Last Stand 感想 -ジェシカ・クルズの頂点-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Justice League Odysseyの最終巻Vol. 4を読みました。

 地球をメインの活動場所としているヒーローStarfire (スターファイヤー、コリアンダー)、Cyborg (サイボーグ、ヴィクター・ストーン)、Azrael (アズラエル、ジーン・ポール・バリー)の3人が不思議な声に呼ばれ宇宙空間に旅立ったところ実は3人を呼んでいたのは宇宙最大の悪であるDarkseidだったのだった、そして宇宙の平和を守るGreen Lantern (グリーンランタン)の一人、Jessica Cruz (ジェシカ・クルズ)も3人とDarkseidの戦いに巻き込まれるのだった。

 スターファイヤー、サイボーグ、アズラエルがDarkseidに洗脳され操られる一方、ジェシカには成り行きでStarfireの姉であるBlackfireやRed Lanternの一員Dex-Starr、Darkseidの息子にして父を殺そうとするOrion、ザマロン星出身の技術者Arla Hax、たまたまその近くにいたGamma Knifeなどの面々が協力しDarkseidを倒そうと頑張るのだった――という本作ですが、終わってみれば本作はジェシカ・クルズの本質と彼女が成長しある種の頂点に達した姿を描き出した作品でした。

 

【基本情報】
Writer: Dan Abnett
Artists: Will Conrad, Cliff Richards
Colorists: Rain Beredo
Letterer: Deron Bennett
Cover: Skan
発行年 2021年


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 この巻ではEpochという時を司る能力を持った人物がクローズアップされ、すべての歴史をうまく操作してDarkseidのいない歴史を作れるかどうか……といった展開になるのですが、それよりなにより、ジェシカがヒーローとして成長しきった姿が印象的でした。

 

 成長しきったジェシカの姿とはすなわち、

  • 仲間を守ることを常に考え、
  • 世界を守ることを常に考え、
  • 時には大胆なリーダーシップを発揮し、
  • 自らの死もいとわない

 というものです。結論から言えばジェシカは立派にヒーローとしてリーダーとして活躍し、Darkseidを倒せないまでも彼の計画の一つは止めることに成功したのでした。

 思えばNew52期Justice League誌で初登場したジェシカ (感想はこちら)ですが、この時の主な敵もDarkseidでジェシカは勇気をふり絞ってヒーローたちに協力したのでした。そしてこの時、サイボーグもジェシカと共に異世界をさまようことになったのでした。

 

 この作品のライターDan Abnett氏はおそらくNew52期のこのエピソードを踏まえた結果、このシリーズではジェシカとサイボーグが――サイボーグはDarkseidに操られているものの、ジェシカが彼に送ったメッセージの効果で少しずつDarkseidに抵抗します――協力しながらDarkseidと戦う姿を描いたのではないだろうかと思います。

 New52期JL誌との大きな違いは、当時はジェシカもサイボーグも若手ポジションだったのに対し、本作では彼らが実質的なリーダーでありチームの中心であることです。

 

 すなわち、New52期JL誌では二人ともスーパーマンやワンダーウーマンといったヒーローたちをサポートするポジションだったのに対し(そしてサポートする中でジェシカは命をほぼ落とします)、本作では彼らこそが他のヒーローを引っ張っていかなければならない立場になっています。

 

 ジェシカに関してはVol. 3でDarkseidのオメガパワーを浴びたために人格が少し変わったということなのかもしれませんが、いずれにしてもジェシカもサイボーグも絶望的な状況で見事に戦い抜きました。彼らが最後まで戦う姿は、「立派」という一言につきます。

 また、本作でもう一人印象的な登場人物がいます。Gamma Knifeです。本作で登場の彼女は恐らく他の作品に登場することはないと思うのですが、「ヒーローとして世界を助けたい」という思いがジェシカと共鳴したかのような存在でした。ジェシカを助けるために2回も死ぬ彼女の姿は、まるで「あり得たジェシカの姿」「もう一人のジェシカの姿」のようにも見えます。

 世界は「この世界を守りたい」と思う多くの人の願いと努力が繋がり合って、奇跡的な確率で守られているように思える、そんな作品でした。

  

 ところで、ジェシカがこんなにしっかり成長すると彼女について今後描くべき物語がなくなってしまうのでは……という懸念はあります。まあそこは、この後のライター達がなんとかするんでしょう。たぶん。