2022年8月20日土曜日

Birds of Prey (1999-2009): Fighters by Trade感想 -大人の友情-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Gail Simone氏がメインライターを務めたBirds of Prey誌の単行本を読みました。このシリーズ、1999-2009年のBirds of Prey誌を10話くらいずつまとめていてくれて読みやすいのですが。以前読んだ、Murder and Mystery (感想はこちら)の続きがこのFighters by Tradeだと思って読み始めたら、すぐ続きというわけでもなく結構間が空いているらしく。

 Murder and Mysteryは56-67話収録、この作品は81-91話収録というわけで途中のエピソードが飛んでいます。

 というわけで読み始めた時は「何でこんな状況になっているんだろう……」という感じでしたが、読み進めているうちに何となく状況が分かり、いつものSimone作品のように面白く読むことができました。

 もともとSimone作品は「何でそうなる!?」という謎展開を入れてくることがありますしね。

 

【基本情報】
Writers: Gail Simone, Jim Alexander
Pencillers: Joe Bennett, Eddy Barrows, Paulo Siqueira, Adriana Melo, Adam DeKraker, David Lopez, Bruce Timm, Bran Walker
Inkers: Jack Jadson, Robin Riggs, Fernando Blango, Will Conrad, Bruce Timm, Jimmy Palmotti
Colorist: Hi-Fi
Letterers: Jared K. Fletcher, Rob Leigh
Collection Cover Artists: Adriana Melo, Will Conrad
発行年 2021年 (連載されていたのは2005年頃)


公式サイトはこちら。



 物語は、Black Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)が謎の麻薬密売組織と接触するところから始まります。読み進めていくと分かりますが、この本が始まった頃のBirds of PreyのメンバーはブラックキャナリーとOracle (オラクル、バーバラ・ゴードン)、それに第二次世界大戦時の戦闘機パイロットでありタイムスリップしてきたLady Blackhawk (レディ・ブラックホーク、ジンダ・ブレイク)の3人です。

 この頃のBirds of Preyの主要メンバーと言えばHuntress (ハントレス、へレナ・ベルティネリ)もいるはずでは――と思っていると、なんでもバーバラとヘレナは仲違いしてヘレナがチームから離脱しているようです。バーバラ、対ヘレナでは割とよく揉めている気がしますね。

 とはいえ、チームから抜けたヘレナが暇を持て余しているわけもなく、ゴッサムマフィア壊滅のために独自の行動をしています。

 一方、麻薬組織をつぶすために動いているダイナとバーバラ、それにジンダですが、ダイナは最強の殺し屋・Lady Shivaからの通信教育で格闘術を磨いていたり、バーバラは宇宙レベルの悪人、Brianicのせいで悪質な寄生虫に感染し死を覚悟するような状態に陥ったり――とそれぞれ、大変なことになっています。比較的のんびりしているのはジンダかもしれません。バーバラとヘレナが揉めているのが読者にも伝わってくる中、のほほんとしているように見えるので癒しになる存在でもあります。 

 上に書いたバーバラの寄生虫の問題がこの一冊の中核となるエピソードだと筆者は感じました。手術を前に死を覚悟したバーバラは仲違いしていたヘレナのアパートに勝手に忍び込み、自分がこれまでヘレナに秘密にしていた過去のことを伝えるとともに「ダイナとは友達でいてほしい」と告げます。

 バーバラがダイナのこともヘレナのことも信じていることが分かる良いシーンだと思います。 

 そして手術は無事に終わりヘレナもそのことを喜ぶのですが、だからといって即座にチームに戻るわけでもなくさらにもう一段階あってやっとヘレナはチームに戻ってきます。

 このバーバラとヘレナの関係が特に印象に残ったのですが、このチームのメンバーの間に友情は確かに存在します。ただそれはなれ合いではなく、お互いの人生のタイミングがたまたま一致して良い関係を築いているのだろうなと思わせるものがありました。

 「みんなで一緒にいること」が目的になる友情ではなく、人生の流れでチームから誰かが離れたり、あるいはチーム自体が解散したりということも受け入れられる友情なのだろうなと感じました。そしてまた、お互いのタイミングが一致すれば一緒に活動するのでしょう。

 総じて、大人の友情だなという印象の一冊でした。