2022年6月6日月曜日

Aquaman (2011-2016) Vol. 8: Out of Darkness 感想 -入りはほのぼの、最後はビターに-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


 2011年から始まったNew52期Aquaman誌のVol. 8を読みました。New52期最終巻です。とはいってもライターが変わったこともあり、大団円的な最終巻というよりは「またすぐ次の話が始まりそう」という終わり方でした。

 

【基本情報】
Written by: Dan Abnett
Art by: Various, Scot Eaton, Norm Rapmund, Brett Booth
Cover by: Norm Rapmund, Brett Booth
発行年 2017年


公式サイトはこちら。



 アトランティスの体制を整えるところから物語は始まります。まず、Aquaman (アクアマン、アーサー・カリー)の願いである「アトランティスを地球の国々の中の一つにする」ということへの一歩として、アメリカにアアトランティスの大使館を構えます。大使にして広報担当はアーサーの恋人であるMera (メラ)。一方アーサーはアクアマンとしての活動のため、RegentとしてTulaを指名します。

 ……このRegentという言葉、調べると「摂政」とか「関白」とか出てきます。要するに王(この場合はアクアマン)の代理として国を治める人を指すようなのですが、摂政とか関白とか言うと日本史で習った人名がちらついてしまうのでアメコミの訳としてはちょっと使いにくいですね。どなたかいい訳語を思いついたら筆者まで教えてください。

 

 Tulaはアーサーの異父兄弟であるOrmの異母姉妹であり、王家の血統に一応属することからRegentにふさわしいというアーサーの判断があった模様です。まあ、アトランティス生まれのアトランティス人が統治するほうが住民の反発は少ない気がします。 

 そんなこんなで、着々とアトランティスと地上世界との交流を進めていくアーサー。生まれ故郷の町でのお祭りにアトランティス精鋭部隊のメンバー、Driftを呼んだりします。アトランティス主力メンバーがみんなで国を留守にしていいのかい? とは思いましたが、お祭りで珍しいものを見て喜んでいる一同の姿が可愛いので良いことにしましょう。

 

 と、ほのぼの展開で物語は進むのですが。

 アトランティスのメンバーがのんびりお祭りを楽しんでいる横で、水を介した殺人事件が次々に発生します。水に何か秘密があるに違いない、と考えたFBIの捜査官二人はアーサーを訪ね、捜査への協力を依頼する――と物語は進んでいきます。

 このFBIの捜査官二人も漫才コンビのようなのんびり感があるため、起きている事件が悲惨な割にほのぼの感はなかなか薄れません。しかし、事件の真相が明らかになるにつれて徐々にほのぼの感は薄れていきます。最後に至っては、苦いとしかいえない後味です。

 

 初めは楽しくスタート、ラストは人生の苦みを感じさせるというよくできた二時間ドラマのような一冊でした。