2022年4月23日土曜日

Detective Comics (2016) #1034-1039, Batman Secret Files: Huntress 感想 -孤独な二人-

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

  Detective Comicsは、Batman (バットマン、ブルース・ウェイン)やその仲間であるバットファミリーの活躍を描くシリーズです。

 2021年3月から始まったInfinite Frontier期から現在(2022年4月)まで、Mariko Tamakiがメインライターを務めています。設定としてはRebirth期の最後の頃に起きた出来事を引き継いでいるようで、

 

  • ブルース・ウェインは大富豪ではなく中流階級に。
  • ナカノ市長が反ヴィジランテ政策を打ち出しており、バットマンたちヒーローの活動は違法に。
  • もともと治安の悪かったゴッサムだが、犯罪者集団のボスが牛耳るというよりもチンピラが闊歩する街に。

 などの変化が見られます。また筆者としてはBatgirl (バットガール)として活動していたBarbara Gordon (バーバラ・ゴードン)が情報収集・分析のスペシャリストであるOracle (オラクル)専業になっているようなのも気になるところです。バットガールという名前はStephanie BrownとCassandra Sandsmarkという後輩たちに譲ったようなので今後は当分オラクル専業でいくのでしょうか。

 

 そして、このMariko TamakiのDetective Comicsではゴッサム中心に活躍するヒーローの一人、Huntress (ハントレス、ヘレナ・ベルティネリ)がスポットライトを浴びるということで1034-1039と関連する短編Batman Secret Files: Huntressを読んでみました。なお、1034-1039は単行本ではVol.1に収録されています (Amazonのサイトはこちら)が、Batman Secret Files: Huntressの方はどの単行本に収録されているのか不明です。

(※2023/03/19追記: Batman Secret Files: HuntressはVol. 2に収録されました。感想はこちら。

 

【基本情報】
Written by: Mariko Tamaki, Meghan Fitzmartin
Art by: Dan Mora, Clayton Henry, Karl Mostert, David Lapham
Pencils: Viktor Bogdanovic
Inks: Jonathan Glapion, Viktor Bogdanovic, Daniel Henriques, Norm Rapmund
Colors: Jordie Bellaire, Trish Mulvihill
Letters: Aditya Bidikar, Rob Leigh
Cover: Dan Mora, Irvin Rodriguez
発行年 2021年


公式サイトはこちら (Detective Comics #1034)。


公式サイトはこちら (Batman Secret Files: Huntress)。



 相変わらず治安の悪いゴッサムだったが、ブルースの近所の女性が殺され、ブルースが疑われるようになる。ブルースはバットマンとして捜査を続けるうちに意外な真相にたどり着くのだったが……というのがあらすじです。

 

 大変読みやすく、面白いエピソードでした。キーパーソンになるのがブルースのほかに被害者の父、ナカノ市長の関係者など数人なのですがそれぞれの思惑が入り乱れて事態はSF的な意外な展開を見せていくことになります。

 ブルースが中流階級となったことで、隠れ家にしているバットケイブにも手作り感がでてきていいですね。

 

 さて肝心のハントレスですが――とても格好良かったです。ゴッサムのヴィジランテの一人として孤独に活動しています。友達がいないと思っているようですが、上に書いたオラクルとは頻繁に連絡を取り合っています。バーバラは友達ということでいいのでは。だめなんでしょうか。

 Rebirth期などに連載されたBirds of Prey (感想はこちら)などでの仲間とのわちゃわちゃ感はなく、ある意味でハントレスの原点ともいうべき孤独さが印象に残ります。特に1035, 1036に収録されていたハントレス主役の短編はハントレスの寂しさとゴッサムという町の残酷さを強く印象付けるエピソードでした。

 この作品ではブルースも、執事のアルフレッドはいなくなりファミリーはそばにいるわけではなく――と、孤独感が強いのですがそんな二人が「被害者のために」と同じ方向を見て事件を解決しようとしているのがいいと思います。

 1038のカバーが格好いいのですが、(下図、Cover: Dan Mora)

 


 

 バットマンとハントレスは同じ方向を見ながら、とはいえお互いに寄り添うことはなく戦っているという印象でした。

 なお、Batman Secret Files: Huntressは1039の続編的なエピソードです。1040との間を埋める話なのかなと思いますが、実際はどうなのでしょうか。