2022年4月10日日曜日

Batman & the Outsiders (2019-) Vol. 3: Demon's Fire: 勝利の末の孤独

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Batman (バットマン、ブルース・ウェイン)と、Black Lightning (ブラック・ライトニング、ジェファソン・ピアース)、Katana (カタナ、タツ・ヤマシロ)、Orphan (オーファン、カサンドラ・ケイン)、Signal (シグナル、デューク・トーマス)からなるOutsidersがRa's al Ghulの野望を食い止めるために戦うBatman & the Outsidersの最終巻を読みました。

 Vol. 2で故郷の村をRa'sの新兵器により壊滅させられた暗殺者のLady Shiva (レディ・シヴァ)も仲間に加わっています。シヴァはカサンドラの母でもあり、カサンドラをバットマンから取り戻すという目的もあるようです。

 

【基本情報】
Writer: Bryan Hill
Artists: Dexter Soy, Gleb Melnikov, Marcio Takara
Colorists: Veronica Gandini, Ivan PLascencia
Letterers: Clayton Cowels
Collection Cover Artists: Tyler Kirkham, Arif Prianto
発行年: 2021年

公式サイトはこちら。



 最終巻ですが、バトルシーンはそれほどでもないな……というのが第一の印象でした。一応戦っている場面はあるのですが、なんともあっさり終わってしまうといいますか。

 その代わりに何が描かれているかというと、チーム内メンバーのそれぞれが何を願うのか、そしてそれは自由意志なのか? という問題だと思いました。

 チーム内にレディ・シヴァという「Ra'sに復讐はしたいし、娘のカサンドラのことも取り返したい」という異分子が混ざったことでカサンドラとデュークという若手二人の周りは俄然スリリングになります。

 チーム内の保護者ポジションだったカタナとシヴァの一騎打ちの末、シヴァはカサンドラとデュークの二人を連れて独自にRa'sの居所を探すようになります。

 

 シヴァは娘がバットマンのそばにいるのも気に入りませんが、バットマンの周りのメンバーがバットマンの判断なしには行動できないように見えるのも気に入らないようです。

 これはまあ、第三者がバットマンとその周りのヒーローたちを見ていたらそう感じるのかもしれないという気がします。「バットマンが死ねと言ったらあんたは死ぬんかい」ぐらいに煽りたくなることはありそうです。

 

 とはいえ、バットマンはあくまで「仲間に信頼を置き、様々な選択は本人の意思にゆだねる」というのが基本スタンスですので(※たとえ周りからはそうは見えないとしても)、最終決戦でRa'sは倒せるもののバットマン自身が望んだものは得られない――という、実に悲しい結末が待っています。

 これはぜひ読んで確かめていただきたいのですが、仲間を率いて3巻分も戦った末にバットマンが得たものがこの孤独感なのか――と思うと、侘しいですね。ゴッサムに戻れば仲間たちが待っている(はず)とはいうものの。

 

 

 ちなみに、Vol. 2で妖刀Soultakerの中に潜む最大の敵と戦ったカタナさんですが、その時に先祖のMiyakoから与えられた力はずっと残っているらしく、火、風などの4つの元素を操る力を得たのだそうです。妖刀を持ってはいても物理攻撃中心の人だと思っていましたが、だんだん魔法系のキャラクターになっていくのでしょうか。

 

 なお、この巻でやけにライバルっぽかったカタナさんとレディ・シヴァですが、2022年4月から新生Birds of Preyを率いるエピソードが描かれることがニュースサイトで報じられています。シリーズとして続いていくのかどうか分かりませんが、面白くなるといいですね。