2021年10月29日金曜日

Tales from the Dark Multiverse: Wonder Woman: War of the Gods (2020-) #1 感想 -バッドエンドではあるけれど……-

  DCコミックス社は数年に一度設定をリセットしたり世界観の雰囲気を少し変えたりしています。2016年に始まったRebirth期は2020年に終わり、2021年からInfinite Frontier期と呼ばれる新しい時期になりました。とはいえ、Infinite Frontier期は今のところRebirth期に直結していると言っていい様子で、大きく設定が変わっているわけではありません。

 Rebirth期の最後を飾った大規模イベントがDark Nights:Death Metalです。多くのヒーローたちを巻き込んだ巨大イベントだけに、そこから派生した様々な作品が生まれました。

 

 今回読んだ作品も、その中の一冊です。コンセプトとしては「Dark Multiverseと呼ばれる最悪の世界で、DCコミックスでこれまで描かれてきたエピソードが迎えていたバッドエンドを語る」というもののようです。

 本作の場合、Wonder Woman: War of the Gods (公式サイトはこちら ※筆者未読) というエピソードをベースにバッドエンドを迎える様子を描いています。

 

【基本情報】
Written by: Vita Ayala
Art by: Ariel Olivetti
発行年 2020年


公式サイトはこちら。


 Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)とヒーローたちが神々同士の戦いを止め、黒幕であるヘカテを止める。しかしヘカテはダイアナの中に入り込み、内側からダイアナを支配しようとするのだった。当初はヘカテを抑え込んでいたダイアナだったが、様々な事件による怒りと憎しみがダイアナに蓄積し、ついにヘカテにあ身体を乗っ取られ、ヘカテが大暴れする事態に。果たしてヒーローたちはヘカテを倒し、ダイアナを助けることができるのか――というのがあらすじです。

 

 バッドエンドを迎えるとは言っても、ヒーローたちの性格がねじ曲がっているタイプの作品ではありませんでした。ヒーローたちはあくまでヒーロー然として頑張っているのですがうまくいかない、というわけで個人的には読みやすい作品でした。

 もっとも言い方を変えれば「ヒーローたちがみんなで頑張っても結局世界を救えない話」なので、こっちの方が辛いという人もいるかもしれません。

 

 あくまで主役はダイアナなのですが、ザターナがかなり重要なポジションで出てきているのが嬉しい一作でした。ダイアナはいつも通りヒーロー仲間の皆に愛されているのですが、ザターナとダイアナとの友情が作品を締める鍵になっています。

 本作自体はバッドエンドです。それでも、もしかしたらザターナがこの話のラストの後でダイアナを何とかしてくれたかもしれないとそんな風に思いたくなります。バッドエンドでありながら、読後感は決して悪くない一作でした。