2021年4月29日木曜日

Justice League (2018-) Vol. 3: Hawkworld 感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。 


 Justice League (2018-)のVol. 3を読みました。何と言ってもサブタイトルがHawkworldですし、表紙にも大きくHawkgirl (ホークガール、ケンドラ・ソーンダース)が出ていますし大活躍しているに違いない――と楽しみにしていました。実際、ホークガールがクローズアップされる一冊でした。

 

【基本情報】
Writers: Scott Snyder, James Tynion IV
Art by: Jim Cheung, Pasqual Ferry, Guillem March, Daniel Sampere, Stephen Segovia
発行年 2019年


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 この本に収録されているエピソードは大きく二つに分かれます。

 前半は、ホークガール、Martian Manhunter (マーシャン・マンハンター、ジョン・ジョンズ)、Greel Lantern (グリーンランタン、ジョン・スチュワート)の三人がTotalityの秘密を探るためThanager Primeという星に行く話、後半はVol. 1に登場して以来意識不明だったStarman (スターマン)が意識を取り戻し、今回の事件のおおもとの原因であるSource Wallの穴を塞ぐためにヒーローたちを総動員する話です。

 

 ホークガールはどちらでも活躍します。そして結構ややこしい話になっています。ホークガールは、古代に殺された魂が幾度も輪廻転生を繰り返していくつもの人生を送っている(本人もそれを覚えている)という、それ自体で複雑な設定を持つ人なのですが、同じ魂から生まれ変わったはずの人と出会ってしまったりという厄介な状況に……。そんなこんなで、マーシャン・マンハンターとの恋愛……というか、孤独なもの同士の結びつきも描かれるという盛りだくさんな一冊になっています。

 

 以下、ネタバレを含む感想です。

 

 ***ここからネタバレ***

 

 Thanager Primeという星には過去の様々な記録が残されており、マーシャン・マンハンターの故郷である火星の過去のことも、火星が滅ぼされたことと今回の事件との関係も分かるはず……ということで一行はこの星に向かったのですが、確かにいろいろなことが分かりました。

 なんでも、かつて世界の始祖たるPerpetureという女神がすべてを作り出したのですが、後に彼女は封印され今のような世界の形になったのだそうです。しかしSource Wallが壊れた今、彼女が世界を自分の手に取り戻そうとするだろう――という状況になっているようです。この辺、Rebirth期に連載されていたJustice League Dark (感想はこちら)にも似ていますね。Darkの方では、魔法が生まれた時に切り離されて追いやられた闇の部分が再びこの世界に侵攻してくるというお話でした。

 

 とはいえ、Darkの方は闇そのものであるUpside-Down Manが自らやって来たのに対し、Perpetureの方はLex Luthor (レックス・ルーサー)たちの力により蘇ることになりそうです。お膳立てされて初めて行動できるタイプなのでしょうか。

 

 それはともかく。

 

 ケンドラ・ソーンダースに関しては、Thanager Primeで自分と同じ魂を持つはずのShayera Holと出会うという衝撃的な展開になります。Shayera HolはThanager Primeの女王であり、星の秘密を守るためケンドラたちJustice Leagueと対立します。同じ魂を持っているのでホークガールを攻撃するのは躊躇するのかと思ってみていたら、別にそんなことはなくガンガン攻撃してきます。同じ魂を持つといったところで結局は他人だし――みたいなことでしょうか。

 本来一人のはずの二人が別れて生きることになったのもPerpetureの陰謀だったらしく、――Shiera Hallという名前の人として死んだときにPerpetureが魂を分けたようです――Starmanが二人の魂をケンドラに統合します。と言って、Shayera Holが消滅してしまったり抜け殻になってしまったりするわけではなく、Shayera HolはShayera Holとして人生を生きていくことになるようです。……呪いの輪廻から抜けることができたなら、Shayera Holの方が幸せなんじゃないかなと思いました。

 

 というのも、後半のSource Wallの穴をふさぐ展開ではStarmanの作戦に従い自分の身を犠牲にすることを決意するケンドラなのですが、その時に

 

 "I'VE SACRIFICED MANY LIVES TO CAUSES LESS NOBLE THAN THIS."

「私はいくつもの人生を、もっとずっとちっぽけなことで犠牲にしてきた」

 と言うのですよね。数々の輪廻転生をすべて覚えていれば、きっとつまらないことで死んでしまった時もあったのでしょうけれど。いくつもの人生を経験していることで、逆に今この時の人生の価値が相対的に軽くなってしまっているような、そんな印象を受けたのでした。ケンドラは果たして、何のために生きているのでしょうか。

 

 物語は、Source Wallの穴ふさぎがうまくいかず、ケンドラも犠牲にならず、さらに次へと進んでいきます。