Zatanna (2025)を読みました。ザターナが主役の6話完結のミニシリーズです。ザターナが主役の作品といえば、Zatanna by Paul Dini (感想はこちら)が2011年のNew52開始とともに打ち切りとなり、その後はJustice League Darkなどのチーム誌でメインとして活躍するもののソロ誌はなく、ミニシリーズはたまにあるもののZatanna and the House of Secrets (感想はこちら )のような子供向けレーベルだったり、Zatanna: Bring down the House (感想はこちら)のようにBlack Labelだったりと、コミックの本流とはあまり関係ない設定でも展開できるタイプの物語でした。
もちろんZatanna and the House of SecretsもZatanna: Bring down the Houseも面白いんですよ! 面白いんですが、ザターナというキャラクターの掘り下げということを考えると、ここでどれだけ面白い物語が展開してもほかの物語に影響することはないわけで。ぽつぽつと孤島ができているけどほかの島とつながることはないんだよなあ、という残念感は正直ありました。
それがついに、とてもオーソドックスなザターナ主役のミニシリーズの登場です。DCコミックスにおけるザターナというキャラクターの今後について考える契機にもなりました。
Writer: Jamal Campbell
Artist: Jamal Campbell
Cover: Jamal Campbell
Colorist: Jamal Campbell
発行年 2025年
マジックショーのための準備に余念がないザターナ。しかし敵に襲われ、スタッフが誘拐されてしまうのだった。奇妙な剣に刺されたザターナは魔法力を十分に使えないまま敵のアジトへと迫るのだったがーーというのがあらすじです。
見どころはなんといっても、さほどお助けキャラが出ずにザターナが一人で頑張ることがあげられるでしょう。Justice League Darkの仲間たちがザターナのために協力する場面はありますが、主役はザターナという作品のスタンスが一貫しています。
ザターナをサポートするキャラクターとしてConstantineやBatmanが出てくるとどうしても彼らのほうにスポットライトがあたりがち、というのがザターナのお話のあるある展開なのですが、ちゃんとザターナ主役というのを最後まで徹底しています。そしてその結果として、ザターナの意思の強さや困るくらいの頑固さが表現できていたので良かったと思います。
以下、ネタバレを含む感想です。
***ここからネタバレ***
敵役としてBrother Nightが出ます。誰? と思ったあなた。Zatanna by Paul Diniに登場する敵役の一人(一番強そうだった)です。
ザターナというキャラクターは1964年デビューで、ヒーローとして活躍していたお父さん (Giovanni Zatara)が行方不明になっていたのを探す娘として登場します。その後はJustice Leagueにも入り、DCコミックスの魔法系ヒーローを代表するような存在に――なっているはずなのですが、キャラクターの掘り下げが弱い! と感じざるを得ません。
なんで掘り下げが弱いかといって、結局、家族やら友人やら恋人やら宿敵やら、因縁のある相手が少なすぎるからだと思うのですよ。結果として、だいたいお父さんやConstantine (元恋人)や初登場時の敵のAlluraとのあれこれがお話になりがちです。このミニシリーズもそういう面はあります。
ザターナというキャラクターを掘り下げるのに一番カギになりそうなエピソードはIdentity Crisis (感想はこちら)だったんじゃないかと思います。ザターナが何を考えてあんなことをしたのか、それが後々彼女の人生観にどう影響していったのか掘り下げる余地はたくさんあったはずです。しかし、話の収拾がつかないからか現在のDCコミックス世界ではもはや「なかった話」になっているようですし。
ただそれでも、今回のミニシリーズがBrother Nightを引っ張り出してきたのには希望が持てます。今までザターナはそれなりに敵のキャラクターとも絡んできたわけで、今後もかつての敵を再登場させることでザターナとの間に様々な因縁が積み重なった宿敵に育っていくといいなと思います。
なお、ザターナファンには2026年3月からザターナ誌が連載開始という嬉しい発表がありました。