2023年12月2日土曜日

I am Batman Vol. 1 感想 -公平な裁きとは-

  Batman (バットマン)といえばその正体はゴッサム市の大富豪ブルース・ウェインですが、彼に様々な科学技術を使ったスーパーメカを提供して協力するLucius Foxの息子、Jace Fox (ジェイス・フォックス)が新たなバットマンとして活躍するI am BatmanのVol. 1を読みました。以前読んだThe Next Batman (感想はこちら)の続編にあたります。また、ゴッサム市警本部長をつとめるRenee Montoya (レニー・モントーヤ)の活躍を描いたGCPD: The Blue Wall (感想はこちら)はこの作品のスピンオフになるのだと思います。

 The Next Batmanではジェイスがバットマンのコスチュームを見つけるところで終わっていたわけですが、この作品では本物のバットマンがいなくなったとされるゴッサム市でジェイスが第二のバットマンとして活躍する姿が描かれます。The Next Batmanでとにかく強烈だったフォックス家兄弟姉妹の確執は薄くなって、ジェイスの自分探しという印象も強い一冊でした。この作品でもレニー・モントーヤはゴッサム市警本部長を務めていて、出番こそ少ないですが印象に残りました。

 

【基本情報】
Writer: John Ridley
Artists: Travel Foreman, Stephen Segovia, Christian Duce, Olivier Coipel
発行年 2022年


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 ジェイスがバットマンとなるゴッサム市は荒れ果てています。具体的には、人々と警察との間に信頼関係がなく、悪人集団はわがもの顔に振る舞い、反ヒーローをとなえるナカノ市長の政策により民間傭兵部隊 Magistrateが大暴れし、バットマンをはじめとするヒーローたちは息をひそめている――といった状態です。

 

 レニー・モントーヤはゴッサム市警本部長として警察と市民との間に信頼を取り戻すべく、同時に犯罪者を捕まえるべく頑張っています(GCPD: The Blue Wallで彼女の話は存分に描かれています)。

 一方、ジェイスはというと新たなバットマンとして活動しつつ、自分は何をすべきなのか迷っているという状態です。

 話を読み進めていくにつれてだんだんわかってくるのは、この街の病理の一つが「公平な裁きがなされない」ところにあるということです。同じ犯罪を犯したとしても、お金持ちであるか、白人であるか、そういった要素で受ける刑は異なり、その後の人生も変わってきます。ゴッサム市に限らず、またアメリカだけにも限らず、どこの国のどこの町でもこうした不公平はあるのだろうと思いますが、荒れ果てたゴッサム市ではこうした不公平さは人々を追い詰めるだけだとレニーは思い、ジェイスもまたそう感じているようです。

 

 治安を維持するためには法が機能しなければなりませんが、法が自分たちにとってだけ無闇に厳しく運用されるとなったら法を守ろうというモチベーションはわかないでしょう。

 

 The Next Batmanで描かれたように、ジェイス自身もお金持ちの両親に自分の罪をもみ消してもらった(本人はそこまでのつもりはなかったとしても)人間です。彼が自分の罪にどうけりをつけようとするのか、それは今後に持ち越されていく模様です。

 

 なお、この巻の終わりにジェイスはゴッサム市を離れニューヨークに行くことを決断します。公平な裁きを求めることがテーマならゴッサム市にこだわる必要はありませんし、ブルースのバットマンに囚われないですむニューヨークに行くのは正解だなと感じました。