2020年10月10日土曜日

The Outsiders by Judd Winick Book One 感想

  2003年から連載されていたOutsiders誌の単行本を読みました。Batman(バットマン、ブルース・ウェイン)の初代相棒のRobinを務めていたNightwing (ナイトウィング、ディック・グレイソン)は若手チーム Teen Titans、後にはTitansと名前を変えたチームのリーダーとしても活動していました。しかしある事件により彼はTitansを解散し、失意の中でOutsidersというチームのリーダーになることになります。

 

【基本情報】
Written by: Judd Winick
Art by: Various, ChrisCross, Tom Raney, Alé Garza
Cover by: Scott Hanna, Tom Raney
発行年 2019年 (単行本の発行年。連載されていたのは2003年頃)

公式サイトはこちら。



 そもそものポイントとして、ディック・グレイソンのOutsidersというチームができる前までは

  • 初代Robinであったディック・グレイソンがリーダーのTitans
  • 三代目Robin、ティム・ドレイクがリーダーのYoung Justice

 

 という二つの若手チームが活動していました。

 しかし、この本に収録されているTitans/Young Justice: Graduation Dayというイベントで二つのチームが強大な敵と戦い、TitansのメンバーであったDonna Troy (ドナ・トロイ)が死亡するという悲劇が起きます。このショックでディックはチームを解散するのですが、子供のころから彼と一緒にヒーローとして活動していたArsenal (アーセナル、ロイ・ハーパー)は新しいチームを作ろうと奔走します。

 一方、ティムたちのYoung Justiceも解散し、こちらは新しいTeen Titansというチームになります。このチームについては、Teen Titans By Geoff Johns (感想はこちら)で描かれていますのでそちらをお読みください。

 Graduation Dayのイベントを契機に、当時の若手チームの再編が一気に行われたという感じですね。

 さて、筆者としてはDonna Troy (ドナ・トロイ)が死ぬというTitans/Young Justice: Graduation Dayを読みたくてこの本を買いました。一冊の前半がGraduation Dayとそのあとのドナの追悼のお話になっています。これについては後のネタバレを含む感想で触れます。

 後半にはディックがロイの励ましもありOutsidersを率いていく姿が描かれます。ドナの死にショックを受けたディックは、友達が死ぬのはもう見たくない! 僕は一人でやる! ということでチームを解散するのですが、

ロイに

"WHAT IF THEY'RE STRANGERS?"

 「全然知らない奴らだったらどうだい?」


 と聞かれます。ロイが言っているのは、今までのチームTitansはファミリーになってしまったから良くなかったのであって、仕事仲間としてのドライな関係だったらまだ何とかなるのではないかということです。

 

 つい最近読んだRebirth期のTitans誌でも、このチームは友達同士だから良くないのでは、もっとプロフェッショナルな観点からメンバーを集めた方がいいのでは――といいつつ結局メンバー同士が友達にならないとだめだ、という話になっていました。

 大人のヒーローチームであるJustice Leagueが存在する以上、若手ヒーローチームたちはJustice Leagueとの性質の違いを描く形になりやすいと思います。メンバー同士が友達かどうか、というのはJustice Leagueとの差を描くときの重要なトピックなのかな――と思いました。とはいえ、この本の後半を読んでいくと分かるように結局チームメンバーは仲良くなっていくわけです。

 最初は知らない人たちの集まりでも、結局は友達同士になってしまうんじゃないかなと思いました。

 

 以下、ネタバレを含む感想です。主にGraduation Dayについて。

 

 

 ***ここからネタバレ***

 

 突然の強敵の襲来にTitansとYoung Justiceは後手後手ながらも対応せざるを得ず、その中で最も勇敢にたたかったドナ・トロイが犠牲になり――というのがGraduation Dayのあらすじです。ドナが二代目Wonder Girl (ワンダーガール、キャシー・サンズマーク)を励ましたり、ドナの死後、Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)がキャシーと共にドナの思い出を語りながら死を悼むシーンがあったりしてとても良かったと思います。

 

 が。しかし。けれども。一点どうしても気になることがあって、そのもやもやが晴れないままになってしまいました。

 

 この戦いで、Titansのもう一人のメンバー、Omen (オーメン、この頃の名前はリリス・ジュピター)も殺されているのです。しかし彼女はドナほどチームに長く所属していたわけではないからか、その死はさらっと流されています。

 ディックもドナの死のことはあれこれ語りますが、リリスの死のことはそれほどでもありません。

 ドナの葬儀の場面では「リリスの葬儀の時は家族も少なくそんなに人も集まらなかったけれど、ドナの葬儀には大勢の人が集まった」とわざわざ説明がついています。

 

 ……いや、その。

 友達友達というならリリスの死のことももっとちゃんと悼んであげてー! それを作中で描いてー! と言いたくなってしまう展開でした。

 

 Rebirth期Titansでも、OmenはTitansが一時的に解散した時にTempest (テンペスト、ガース)と旅に出てそのまま退場してしまってどうなったか良く分からないのですよね。チームメンバーの間であんまり扱いに差をつけてほしくないなと思うのでした。