2020年6月28日日曜日

Birds of Prey: Sirens of Justice #1 感想

 このシリーズの各話感想は以下をご覧ください。


 Gail Simone氏が久々にライターを務めたBirds of Preyを読みました。この作品はコロナウィルスの影響でDCコミックスの紙媒体での出版が遅れ、デジタル配信のみで販売されたいくつかの作品の中の一つです。
 
【基本情報】
Writer: Gail Simone
Penciller: Inaki Miranda
Inker:Inaki Miranda
Colorist: John Kalisz
発行年 2020年

Amazonのページはこちら。購入及び数ページ分の試し読みができます。


 ある日、Harley Quinn (ハーレイ・クイン)から事件の情報を得たBlack Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)とHuntress (ハントレス、ヘレナ・ベルティネリ)。二人は半信半疑ながら事件の現場に向かうのだったが――というお話です。
 
 ストーリーは短いものですので、あっという間に終わります。筆者が注目したのは、ライターのGail Simone氏はBarbara Gordon(バーバラ・ゴードン)のいないBirds of Preyをどう描くか――という点でした。
 映画「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」が公開されてからというもの、コミックで描かれるBirds of Preyも映画に合わせてバーバラが登場せず、ハーレイが登場するという流れになっているようです。

 一方、そもそもBirds of Preyはバーバラが始めたチームだというのは全く疑いのないところです。
 
 バーバラ、ダイナ、ヘレナの三人のチームとしてのBirds of Preyを確立したGail Simone氏が、バーバラのいないBirds of Preyをどう描くかというのは気になる点でした。
 
 結論から言うと、バーバラが登場しないのはそんなに不自然にならないように物語が作られていました。冒頭のハーレイが相談に訪れるところから、劇中時間にしておそらく数時間程度で事件が解決しています。というわけで、話を聞いたダイナとヘレナが二人でそのまま事件を解決していてもさほど不思議ではありません。
 
 また、この物語は「ダイナとヘレナはハーレイの話を信じることができるか?」というのが一つのカギになっています。バーバラが不在であることでこのテーマを描くことができた、とも言えます。
 
 というのも。
 バーバラは情報収集に長けていますので、ハーレイの話を信じるかどうかという局面になれば諸々の裏付けをとって判断することができます。しかし、「裏付けが取れたからあなたの話を信じます」というのは刑事や裁判官が言う言葉であって、たとえば友人同士の信頼関係には結びつかないものです。誰かのことを信じるか? という局面には、裏付けを調べることなく「えいやっ」と信じてみることが必要になります。
 
 というわけでバーバラの不在が作品のテーマともかみ合っていてうまい展開だった――と、思います。でも、映画の余韻が冷めた頃にはバーバラがいるBirds of Preyのコミックが出版されるといいな、とは思ってしまうのでした。