2022年12月24日土曜日

Birds of Prey (1999-2009):Hero Hunters感想 -バーバラの倫理観-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Gail Simone氏がメインライターを務めたBirds of Prey誌の単行本を読みました。このシリーズでは1999-2009年のBirds of Prey誌を10話くらいずつまとめています。

 公式サイトによると、この本では96-103話が収録されているということで、以前読んだFighters by Trade (感想はこちら、81-91話収録)の後の話ですね……ということで読み始めたのですが。

 どう読んでもFighters by Tradeの前の話です。

 各話の表紙を頼りに調べてみると、この巻は68-80話収録のようです。どうして公式サイトが平気で間違っているんでしょう。

 ちなみにFighters by Tradeは81-91話収録で、これは公式サイトが正しいですね! (……当たり前では?)

 

 ということで、筆者としては「この本、Fighters by Tradeの前に読みたかったな……」と思いながら読むことになりました。今からこのBirds of Preyシリーズを読む人は、公式サイトやAmazonの表記に惑わされずに「Hero Huntersを読んでからFighters by Trade」と覚えておいてください。

 さて、というわけで本作ではOracle (オラクル、バーバラ・ゴードン)、Black Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)、Huntress (ハントレス、ヘレナ・ベルティネリ)が3人のチームとして信頼関係を強めていく様子、そしてバーバラとヘレナが喧嘩してヘレナがチームから離脱する様子が描かれます。これがFighters by Tradeに繋がっていくんですね。

 また、4人目のメンバー、凄腕パイロットのLady Blackhawk (レディー・ブラックホーク、ジンダ・ブレイク)がチームに加入するのもこの巻でした。

 

【基本情報】
Writers: Gail Simone, Bill Willingham, Dylan Horrocks
Artists: ED Benes, Tom Derenick, Ron Adrian, Kinsun, Mike Huddleston, Jim Fern, Joe Bennett, Eric Battle, Eduardo Barreto, Joe Prado, Rob Lea, Bob Petrecca, Rodney Ramos, Aaron Sowd, Adam DeKraker, Jesse Delperdang, Andrew Pepoy, Steve Bird, Ruy JOse, Hi-Fi, Jason Wright, Tony Avina, Jared K. Fletcher, Rob Leigh, Ken Lopez, Phil Balsman
Cover: ED Benes, Brian Miller
発行年 2021年


公式サイトはこちら。

BIRDS OF PREY: HERO HUNTERS

After being paralyzed by the Joker, former Batgirl Barbara Gordon became Oracle and formed a crime-fighting team with other female heroes including the martial artist with a devastating sonic scream, Black Canary, the vigilante known as the Huntress and the mysterious Lady Blackhawk!



 収録されているエピソードは主に、

・謎の宗教団体による誘拐事件を追う話(ここでバーバラがブライアニックのウィルスに感染する)

・Batman (バットマン、ブルース・ウェイン)を助けるため、バーバラがBirds of Prey (BoP)の基地にしているクロックタワーを吹き飛ばす話(→この結果として、飛行機を入手、パイロットのジンダをスカウトしてバーバラはゴッサムを離れる)

・いろいろな事件を解決していたらハントレスがバーバラと喧嘩してチームから離れる話


 というものになっています。

 まずクロックタワーの話についての感想ですが、これはどうもバットマンvsブラックマスクにBoPが巻き込まれたということみたいですね。この頃のバットマン誌か何かでvsブラックマスク編を連載していたのでしょうか。 

 ブラックマスクがクロックタワーに侵入、バーバラを脅したところにバットマンがやって来て、ブラックマスクと刺し違える勢いで戦うという流れになっています。バットマンが死んでもいいと思っていることを察知したバーバラはクロックタワーを爆破、足の動かせない自分はバットマンに助けられなければ死ぬと訴えてバットマンに救助活動をさせ、結果的にバットマンを救うのでした――という話になっています。

 

 これを読んだ時の筆者の素直な感想は「なんて無茶苦茶なことをするんだ」でした。爆破するときに全員死んだらどうするんですか。

 で、バーバラは大事なもの、家族で撮った思い出の写真などもなくなってしまったと落ち込むのですが、ヒーロー活動で使うものはともかく、そういうものは実家とかに置いておくものでは……何でプライベートの大事なものまで全部秘密基地に持ち込んでるんですかバーバラは。

 

 まあともあれ、落ち込んだバーバラは気を取り直すまでに時間がかかります。チームメイトのダイナとヘレナも、当然それを了解してバーバラを待つことにします。こんな感じで(下図、クリックで拡大)。

 


 セリフを訳すとこんな感じですね。

 バーバラ「私は大丈夫、二人とも。励ましてくれるのは嬉しいけど……でも心を癒すのに少し時間がかかると思う」

 ヘレナ「分かる!」

 ダイナ「可愛い子、もちろん」

 ……

 バーバラ「オーケー、癒しタイムは終わり。やっつけよう」

 

 真ん中のコマが癒しタイムですが、30秒くらいでしょうか。長く見積もっても10分くらいでしょうか。

 バーバラさん、いろいろ感覚がおかしくないですか? と思えるシーンでした。

 さて、そんなバーバラの感覚のおかしさがヘレナとバーバラの喧嘩に繋がっていきます。

 ヘレナはバーバラに紹介してもらった教師の仕事も楽しく、BoPのミッションも充実していて人生バラ色――みたいになっているのですが、バーバラが持ち込む事件がヘレナがかつて負った心の傷を癒すように配置されていることに気づいてしまいいます。

 

 すなわち、バーバラは頼まれもしないのにヘレナにカウンセリング的なことを行っていたわけです。それに気づいたヘレナは、怒ってチームから離れます。

 チームメイトの心の傷をいやそうとすること自体は決して悪いことではありません。が、医療行為にしろカウンセリングにしろ、原則として本人の同意のもとに始めるものですよね。勝手にカウンセリングを始めるのは、ある意味では他人の心を弄んでいることになるわけで。 

 また、友達として素朴な感じでヘレナの力になろうとしているならともかくも、ヘレナが気づかないうちにうまく誘導しようというのがバーバラの作戦だったのでしょうしそれはヘレナも傷つくかもな、と思いました。 

 オラクルとして活動するバーバラは他人のプライバシー尊重という点で大変問題があるのですが、他人の心理を操ることに関してもやや倫理観に問題があるのかなと思います。なんだかこう――オラクルとして活動している内にいろんなことが常識的な感覚から外れていった結果のように感じました。