2023年5月7日日曜日

DC Dark Knights of Steel Vol. 1 感想 -エルスワールド設定だからこそ引き出せるキャラクターの魅力を-

  Dark Knights of Steelの第一巻を読みました。トム・テイラーによるエルスワールド(一般的なDCヒーローコミックの設定とは全く違うパラレルワールドの設定でキャラクターを動かすもの)もの作品で、中世ファンタジー風の作品になっています。

 トム・テイラーと言えばスーパーマンが悪の存在になる"Injustice"、ゾンビものである"DCeased"などの人気のエルスワールド作品で知られています。が、ヒーローが悪になるのが嫌&ゾンビものも嫌、という筆者にとっては、これが初めて読めるトム・テイラーのエルスワールド作品でした。


【基本情報】
Writer: Tom Taylor
Artists:Bengal, Yasmine Putri
発行年 2022年


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 物語の舞台は主に3つの王国です。一つはクリプトン星の崩壊を逃れて地球にやって来たクリプトン星人夫妻(スーパーマンの両親)が王となったELの国。もともとはブルース・ウェインの両親が国王夫妻でしたが、かつての側近に暗殺されたためスーパーマンの両親が王位についています。ブルース・ウェインは王族の最側近として国王夫妻および王子・王女であり幼い頃からの友達であるKal (カル)とZala (ザーラ、実質スーパーガールなのでカーラでいいのではと思いますが名前が違います)の兄妹を守るために全力を尽くしています……というなんだか不穏な設定です。

 はたから見ていて、クリプトン星人の一族が王位を奪ったようにしか見えないのでは。実際はブルースの母が死に際に彼らに国王になること、将来はブルースに王位を継がせることを望んだためにこうなっているのですが。なお、ブルースは実はJor-EL (カルの父)と母マーサ・ウェインの間に生まれた不義の子らしく、今後に向けてさらに事態は複雑になっていくものと思われます。

 ウェイン国王夫妻を殺したのは、かつての国王最側近だったAlexandra Luthorで、エル夫妻の警告を国王に届けなかったことで追放されました。しかし火山で謎の指輪のパワーを手に入れ、Green Manと呼ばれる存在になります。見た目も含めると、ジョーカーとレックス・ルーサーが合体したようなヴィランっぽいですね。

 さて、そんなクリプトン星人たちの王国をもっとも警戒しているのがKingdom of Storms (嵐の王国)です。国王はJefferson Pierce (Black Lightning)です。彼には予言者としてコンスタンティンが仕えており、空から来るものによって世界が滅ぶことを予言したためこの王国はクリプトン星人たちを敵視しています。

 

 最後の一国はAmazonia。これは普段のアマゾン族の設定に比較的近く、ヒッポリタ女王とダイアナ王女がいます。男子禁制の国ですが、カルの妹であるザーラの留学を受け入れるなど女性には門戸を開いている模様。ザーラとダイアナは恋人関係にあります。

 ひとつ面白いのは、Lois LaneがAmazoniaに属していて他国の情報をあちこち探るポジションについていることです。アマゾン関係者ではない他の女性キャラクターもこの国に属してあれこれ活動してくれるといいなと思います。

 

 さて物語は、Green ManによりKalの父であるエル家国王が殺され(Kingdom of stormsが暗躍しています)、ザーラの姿をした者によりKingdom of Stormsの国王と王子が殺され(Anissa Pierce (Thunder)が新国王になる予定です)、Kingdom of Stormsとエル家が一触即発の状態になります。アマゾンは昔からの慣習に従いKingdom of Stormsと同盟を組んでエル家と戦争を行うことを決めます――という不穏な事態に陥って行きます。

 参戦することを決めたヒッポリタ女王に対し、王女でありザーラの恋人であるダイアナは戦争を止めようとしますがどうなるか――という状況です。

 

 なおヒッポリタ女王がいなくなればダイアナが女王となるはずなので、エル家を支える者たちはヒッポリタ女王をどうにかするという空気もあります。

 作中でロイスが言うように、戦争に向かわせるために何者かが(Green Man以外にも)暗躍していそうですので、最終的にはヒーローたちみんなでその何者かを何とかするんじゃないかなと思って見ていますが、どうなるんでしょうね。

 作品の冒頭でちらっと登場してすぐにいなくなったDinah (ダイナ、ブラックキャナリー)にも今後の登場を期待したいところですし、ザターナにも登場して欲しいところです。

 

 なお、この巻で一番好きなのはLady of Forest (森の女王?)ポイズン・アイビーがダイアナと対峙するこのシーンでした。

 


 

 普段はアイビーとダイアナが共演すること自体があまりないですし、アイビーがダイアナと互角に描かれることは少ないと思うので、とても新鮮に感じました。アイビーは植物パワーを司るGreenと繋がっているわけですから、このくらい強力でもいいよねと思うのです。