2022年10月9日日曜日

Wonder Girl (2021-) #1-#7感想 -実質的には"Wonder Girls"-

  Yara Flor (ヤーラ・フロー)を主役にしたコミック、Wonder Girlを読みました。彼女は2021年から始まったInfinite Frontier期――の、予告編的なシリーズFuture Stateで「将来のWonder Woman」として登場しました。おそらく、Infinite Frontier期を象徴するようなキャラクターとして様々な作品に登場していくようになるものと思われます。

 このWonder Girl誌はヤーラを主役に据え、彼女の背景や基本的な性格を描き出すコミックです。同時に、これまで"Wonder Girl"を名乗ってきたCassie Sandsmark (キャシー・サンズマーク、ワンダーガール)やDonna Troy (ドナ・トロイ)との出会い、さらにはアマゾン族の一人であるArtemis (アルテミス)との出会いも描いています。

 一方、このコミックが連載されていたころはDark Nights: Death Metalのエピソードの影響で死亡していたWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)はまったく登場しません。ワンダーウーマンに強い関係のあるキャラクターのコミックとしては珍しいですね。

 なお、筆者は#1-#7まで一話一話ばらばらに購入して読みましたが、単行本も出版される予定です。

 

【基本情報】
Art by: Joëlle Jones, Adriana Melo, Leila del Duca
Written by: Joëlle Jones
発行年 2021年


公式サイトはこちら (#1)



 ブラジルで生まれたが母を早くに亡くし、アメリカで養女として育てられたヤーラはブラジルを訪ねてみることにする。しかしそれは、アマゾン族たちに大きな影響を与える結果となるのだった。セミッシラ島に住むアマゾン族、セミッシラを出たBana-Mighdallのアマゾン族に加え、ブラジル・アマゾンの密林に潜む第三のアマゾン族 --Esquecidaこそが、かつてのヤーラの部族だったのである。

 そして今、オリュンポスの女王である女神ヘラはヤーラを自分の手駒にしようと愛の神エロスの力を使い、ヤーラをオリュンポスで戦士として育てあげる。そしてヤーラに、神酒を飲むことで不死の存在となるよう迫るのだった。一方、異変を感じ取ったセミッシラの女王ヒッポリタの頼みによりヤーラを探すためブラジルに飛んだキャシーは、アマゾン族の関係者たちと出会いながらヤーラをオリュンポスから取り戻そうとするのだった。 

 ――というのがあらすじです。果たしてヤーラはヘラの思うとおりに不死の存在になるのか、あくまで人間として生きようとするのか、というのが見どころになっています。

 まず、ヤーラについて語られた事実関係を整理しておきましょう。

 ・ヤーラの母、Aellaはセミッシラ島を出て一人世界を旅していたが、ブラジルのある神と愛し合いヤーラを産んだ。だがその神と別れる運命となり、娘と二人取り残される。

 ・失意のAellaの前にアマゾンの密林で暮らしていたアマゾン族 (Esquecida)が現れ、Aellaとヤーラはその部族の一員に迎えられる。

 ・しかし、Esquecidaをオリュンポスの神々の兵が襲撃しAellaを殺す。ヤーラは生き残ったがアメリカの養父母 (Renataおばさん)のもとで育てられるようになる。

 つまりヤーラのアマゾン族と神の間の子であり、ダイアナと似たような出自であることが分かります。とはいえセミッシラ島でずっと育ってきたダイアナとは違い、ヤーラは人間社会の文化をベースとして育っています。この辺は、人間の母と半神(ゼウスの子)の父の間に生まれて人間社会で育ったキャシーに近いですね。

 

 ということで、「ワンダーガール」の先輩でもあるキャシーが「ヤーラがオリュンポスの神々にいいように利用されないように」と頑張るという展開はうまいと思いました。

 ヤーラがヘラに利用されてしまうと何かいろいろなカタストロフィが起きるらしく、ヒッポリタ女王からキャシーが派遣されたのと同じようにバナ・マイダルのアマゾン族からはアルテミスが派遣されて来るのですが、New52期以降恐らく初対面であるアルテミスとキャシーが喧嘩しながらも仲良く(※キャシーの主観)ヤーラを探しているのも印象的でした。

 戦士の一族だからか、けんかっ早いことも多いアマゾン族の中にあってキャシーは比較的穏健派ではあるのですよね。人間ヒーローも交えたチーム(Young Justiceとか)にキャシーがいる場合、割と過激派ポジションにいるように見えますが。

 さて、主人公のヤーラですが。今回のお話では「幼いころに去った故郷に帰ってみたらわけのわからない事件が起きて右も左も分からないままひたすら頑張る」という感じですのでヤーラならではの個性みたいなものはまだあんまり見えてきてないかな……と思います。この後の作品に期待ですね。

 神酒を飲めと迫るヘラに対してあれこれ言って時間をかせぐヤーラの姿はちょっと面白かったです。