Poison Ivy誌のVol. 3を読みました。第2巻でゴッサムに帰還したPoison Ivyですが、ゴッサムで安定した住処を得るために(ハーレイの家に居座ったらいいんじゃないかと思いますが、そういうわけにもいかないようです)活動を始めたところ、自分のかつての罪に向き合わされることに――という物語になっています。
Written by: G. Willow Wilson
Art by: A.L. Kaplan, Kelley Jones, Guillem March, Marcio Takara
Cover by: Jessica Fong
発行年 2024年
ハーレイに呼ばれ、Janet from HRとともにゴッサムに戻ってきたアイビー。ゴッサムで安全に暮らせる住処を見つけようとしたアイビーはひっそりと建つ小屋に目をつけるが、そこはKiller Crocがアジトとしていた場所だった。小屋を使う条件として、アイビーは建設中のあるビルの中に潜入するのだったがそこでは奇妙な現象が起きていたのだった。一方、かつてアイビーが殺人キノコによって殺したはずの人間たちが夢の中でじわじわとアイビーに迫ってきていたのだった――
というのがあらすじです。このPoison IvyシリーズはVol. 1でゾンビパニックものっぽくスタートしたのですが、このVol. 3ではホラーもの……というよりは、「世にも奇妙な物語」のような不思議なテイストの作品に仕上がっています。
Killer Crocに依頼され潜伏したビルの中で、アイビーは何を見るのか。Vol. 1でさんざん殺人キノコをばらまいた彼女に迫る者たちとは何なのか。というのが見どころになっています。
以下、ネタバレを含む感想です。
***ここからネタバレ***
因果応報の物語であり、自然は人間をはるかに超えるという物語でした。という点で大変筆者好みでした。
Killer Crocに依頼されて潜入したビルの中にいた怪人は、そのビルを建設している実業家でしたが貪欲の罪で怪人になってしまったと告白します。もう少し科学的に言うと「新しく開発した建設資材の副作用の影響で体が変化してしまった」ということだと思いますが、顔が巨大な花に置き換わったその造形は「自然によって罰せられた」というのがもっともふさわしい表現だと思います。
またこの人物が大変奇妙な姿ではあるのですが(何しろ顔が花なんだから)、登場シーンには神秘的なものすら感じます(下図)。
彼はアイビーと対立する敵というよりはアイビーに警告を与える存在であり、実際にアイビー自身もその後自らのかつての罪と向き合い、殺人キノコによる犠牲者と向き合うことになります。
思えば、アイビーは「Green (植物の精)の意思の代行者である」という自己認識を持って行動していると思うのですが、実際のところやっていることは結構勝手に考えているように見えます。Greenとつながってはいても人を殺したりしないSwamp ThingのほうがGreenの意向に沿っていそうです。そうすると、アイビーがいくら自然のためにという動機でやったことであってもその罪には向き合わねばならない時が来ます。
今作で面白いのが、その罪に向き合わせるのがバットマンに代表される人間社会ではなく、自然界であるというところです。アイビーはこれまでどれほど思い刑罰を人間社会から受けようとも「自然全体のことを考えれば私のほうが正しい」と思ってきていたとおもうのですが、自然に罰される事態になって果たしてどう思うのでしょうか。