2024年2月6日火曜日

Wonder Woman: Dead Earth感想 -そんなに人間が好きになったのか-

  Wonder Woman: Dead Earthを読みました。他のDCコミックス社のコミックの内容とは特にかぶらない、エルスワールドものに近い作品です。

 分類としてはポストアポカリプスもので、ダイアナが目覚めた世界では地球はごくわずかな人類とそれを襲う怪物たちの星になっていた――というところから物語が始まります。


【基本情報】
Written by: Daniel Warren Johnson
Art by: Daniel Warren Johnson
発行年 2020年


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 ダイアナがカプセルの中で目覚めた時、地球はすっかり変わってごくわずかな人類とそれを襲う怪物たちの星になっていた。ダイアナは数少ない人類をセミッシラ島に非難させようとする。そもそも、なぜ地球はこんな状態になったのか。怪物たちの正体は何なのか。真相を知った時、ダイアナの決断は――というのがあらすじです。

 ダイアナと人類の旅を通して、ゆっくりゆっくりと真相が明らかになっていくさまが見どころの作品だと思います。ほとんど生きものの死に絶えてしまった地球という時点で相当に不穏ですが、怪物のことが徐々に明らかになると更に不穏な空気が増していきます。ダイアナ自身の記憶がないこともあり、なんとなく嫌な真相が待っているんだろうなと思いながらも読み進めることをやめられない一冊だと思いました。

 

 

 以下、ネタバレを含む感想です。真相までしっかりネタバレしているのでご注意ください。

 そもそも地球が滅びの星になったのは人類とアマゾン族の争いが原因でした。海面が上昇し、沈みそうになったセミッシラ。アマゾン族は人類と対立し、最終的にセミッシラに核ミサイルが落とされる。アマゾン族たちは怪物となり、それまで人類とアマゾン族の和解を働きかけてきたダイアナもついに激怒するのだった。ダイアナはスーパーマンと戦い、殺害する。その戦いの結果大火事が起き、地球環境は壊滅。倒れたダイアナが回復し将来目覚めるよう、バットマンはダイアナを回復カプセルにいれたのだった――というのが過去編の真相です。

 

 そして真相を知ったダイアナは様々に悩んだ末、生き残った人類の子孫たちに寄り添っていくことを選びます。読後感想は、「そんなに人間が好きになったのか、ダイアナ」という、「シン・ウルトラマン」(未見ですが)のキャッチコピーのようなものになりました。

 そもそもの原因を探っていくと、海面上昇の時点で人類に原因があります。地球が滅びるまでの過程にはダイアナのやらかしたことが大きいにしても、人間を見捨ててしまっても良かったんじゃないでしょうか。スーパーマンを殺したり、大火事を巻き起こしたことの贖罪と考えるにしたって怪物と化したアマゾン族を殺していくこともまた罪でしょうし。

 ギリシア神話に登場する女神、アストライアには「神々が人類を見捨てた後も人類を信じて残っていた。しかし、人類はよくあるどころか悪くなっていく一方だったのでとうとう彼女も人類を見捨て、天に帰った」という神話があります。

 ダイアナは半分神、半分人間という存在ですが、さっさと人間を見限ってしまった方が良かったのでは。と思ってしまいました。ダイアナがよく言う"Mercy"の精神を筆者が理解できていないからかもしれません。

 ……と、ここまでが最初の感想です。

 改めて読み直すと、この作品のダイアナは破局的なことが起きる前から強大なパワーの制御に苦労しています。子供時代はガントレットをつけることでパワーを抑えるようになるのですが、人類対アマゾンの戦争が起きた時にヒッポリタ女王の意思でガントレットを外しています。その結果として、大暴れするダイアナのことをスーパーマンですら止められず破局に至るわけです。

 

 目覚めたダイアナはガントレットを片方だけ見つけますが、片方では彼女のパワーを抑えることができません。一度地球を滅ぼしたダイアナは果たして再びパワーを暴発させることなく、人を守るために自分のパワーを制御することができるのかというアンガーマネジメントの物語だとも読むことができるなと思いました。

 

 とはいえ、やっぱり早いところ人類を見限った方がいいのではとは思うのですけどね。